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「関西国際空港サプライズ」

 

2013年7月5日金曜日。18時10分。定刻変更の17時42分より28分遅れて、彼女を乗せたイスタンブールからのトルコ航空46便は、無事関西国際空港に着陸した。すべては完璧だった!!

 

関西国際空港は、通称関空と呼んでいる。私が、関西国際空港内にある駐車場のゲートをくぐったとき、発券機の時刻は17時37分だった。彼女が手荷物を受け取って到着口に出てくるまで、十分な時間があった。彼女の乗った飛行機の到着口は、北ウイングの北側であることは事前に調べて分かっていた。

 

関西国際空港の国際線到着口は、北ウイングの北側と南ウイングの南側に分かれていた。さらに、各出口には中央に到着便を掲示する電光ボードがあり、それを壁にして左右から乗客が出てくる仕組みになっていた。

 

しかし、困ったことに左右両方の出口からの乗客を的確に見分けるには障害物もあって奥行きが狭くなり、左右どちらかの出口側に寄らなくてはならず、どうしても反対側の出口が遠目になってしまう。

 

私は、しばらく出てくる人の流れを見て、人の流れの多い出口寄りに立って彼女が出てくるのを待った。

 

国際線到着口のロービーでは、韓国、中国便が多いこともあって、日本語に混じって二つの言語が飛び交っていた。

 

定刻より遅れて待っていると、彼女を乗せた便は、到着ボードよりも早く場内アナウンスによって到着したことが告げられた。

 

私は、駅で待ち合わせているよう気分で待っていたが、場内アナウンスを聞き到着ボードに「到着」と表示されると、にわかに緊張してきた。まだ出てくるはずもないのに、私の眼光はするどく到着口を出てくる人を捉え出していた。

 

到着口から出てくる乗客は、だいたい到着便ごとにまとまって出てくる。その乗客を見る度に私の緊張が高まってくる。そして、私の眼光はさらに鋭くなっていた。

 

そろそろ出てくる頃になってくると、私の緊張は度を越え出してきた。うそのような本当の話、急にお腹が痛くなりだしたのである。その痛みは治まるどころか、ますます激しくなってきた。その痛みはトイレをもよおすぐらい我慢できずになってきて、私の意識は汚い話だが肛門に向けだすぐらい緊迫していた。

 

そのとき出てきた乗客には、韓国、中国便の乗客ではないイスラム圏の雰囲気の人がいて、ここでトイレに行けばすべては水の泡になると思い、私はひたすら我慢した。

 

運が悪いことに、このとき乗客が多かったのか両方の出口から同時にまとまって出てきた。私が立っている出口側の乗客はチェックできたが、どうしても反対側は遠目になってすぐに焦点も合わせづらく、しかも人が重なったりして彼女らしき人と思って凝視して見ていると、すぐにエレベータの障害物に遮られ、確認しようにも動くと今度は私の立っている出口の人を見過ごしてしまうため動けず、私はもの凄いジレンマになった。

 

彼女を探せないまま、気がつけば人の波が途絶えてしまった。「うそだろー!!このままいったら冗談にもならない!!」と私は思うものの、それでも出口からはあとからパラパラと乗客が出て来るのでその場を動けず、私は到着口から彼女が出てくることを祈った。

 

私は「なにかのトラブルでまだ中にいるんだ。」と思いながらも、彼女が携帯電話の電源を入れていることを祈りながらメールを残したが彼女からの返事はなく、いたずらに時間だけが過ぎていった。

 

気がつけば、飛行機が到着してから約1時間半が経っていた。到着ボードを見上げると、彼女の乗って来た便は「手荷物受け渡し終了」と確か書いてあった。しかもその便の表示はどんどん繰り上がって行き、あともう少しでその到着ボードからも消えようとしていた。

 

それを見た私は、さすがに空いていた椅子に気が抜けるように座った。到着口に待っている人もまばらになっていた。待っていた女性が出てきた男性を見つけてハグをする姿を見ていると、私は苦笑いしか出てこなかった。これ以上ここにいても仕方がないと思い、私はフロアーから外に出た。

 

そこには大きな空間が広がっていた。なぜかこの時ばかりは、私には関空が異様に大きく感じられたのだった。

 

帰りの車の中で、私はこの状況に何ともいえない気持ちになりながらも、 「たぶん神様のいたずらか、私のお腹が痛くなって意識が自分に向いて数秒集中力が散漫になったな。しかも遠目に見ていた焦点もぼやけて彼女を見落として、反対側の出口から帰ってしまったのだろう。なんの約束もしてなかったからな。当然といえば当然なんだが。

 

自分がこの現実を創り出したってことなんだろうな!お腹が痛くなって我慢の限界のときに、『(このままトイレに行って)会えなくても仕方がない。』と強く思ったことかな。その前に、極度の緊張でお腹が痛くなったということは、何か見たくないものがあったのだろう。それが正解か!!すべては完璧か!!

 

でも、情けないというかみじめというか。彼女へのサプライズが、とんだ俺へのサプライズになったな。でも、サプライズには代わりないか!なんかあきれるほどもの笑いのエキサイティングな俺やな!!」と思うと笑いが込み上げてきて、私は意味もなく大声で笑ったのだった。

 

これまた不思議と彼女からの連絡は、20時半ごろに友人からの転職が決まった報告メールと2件同時に着信した。彼女のメールの着信時間を見ると、19時38分を指していた。もう笑うしかなかったが、その瞬間私の中でなにかが弾けたのだった。

 

次回は、7月11日(木)「彼女との再会」

 

 

 

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