「人生頼って、頼られて、」
『§まっすぐに生きるのが一番』
「第94話:人生頼って、頼られて、」
哲也が意図しないまま「殺し文句」を言った瞬間から、哲也と優花はお互いを認め合った唯一の存在として、恋人同士の関係になった二人の物語。
前回、哲也は優花がおばあちゃんから『愛』について聞いたことを話していた。
つまるところ、日頃から感謝する心を忘れないでいることが、有り難さ、お蔭様、幸せ、笑顔、嬉しい、楽しい、つながってる、豊かであることに派生していくのだと思った。
そして、それらが私たちの心を、何もいらないと思えるぐらい満たしてくれるとき、哲也はそれを『愛』と呼ぶのだろうと思った。
哲也はそんな話を優花としていて、ふとこんな感情が湧いてきた。
『俺は優花から頼られているのだろうか?俺は優花のことを頼っているのだろうか?』と。
『愛』について優花と語り合って、『人生愛して、愛されてということをもっと学べるよう、感謝の気持ちを大事にすることを誓った』哲也であったが…。
「哲也なに考えてるの?」
「うん、まあ・・・」
「うん、まあ、なんだ。哲也“別に”って言わなくなったね」
「うん、まあ、それは会話として良くないかなって」
「そうだね、“別に”って言われると、疎外されたような感じになるし、なにか隠し事をしているようで不安な気持ちにさせられるし。哲也はちゃんと言葉で言ってくれるもんね」
哲也は気持ちをなるべく言葉にしようと心掛けていた。でも、時に気持ちを言語化するのが難しいときもある。漠然とした気持ちのときは特にそうだ。
優花はそんな俺の言葉に興味や関心を持って聞いてくれるが、素直に言える時はいいけれども、『こんなことをいったら』と、言いづらいこともある。
「で、哲也はなに考えてたの?」
哲也は、『俺は優花から頼られているのだろうか?俺は優花のことを頼っているのだろうか?』と、自分の中で消化できていないのに話せるわけがないと、優花の問い掛けを少し疎ましく感じた。
そして、『別にたいしたことじゃないから』と、言ってしまいたい衝動に駆られた。
もし仮に、『俺は優花から頼られているのだろうか?俺は優花のことを頼っているのだろうか?と考えてた』、なんて言ったら、
『私は哲也のこと頼りにしてるよ。哲也は私のことを頼りにしてくれてなかたったの?』と、返ってくる。
『頼りにしていないわけじゃなくて、そこのところがうまく言えないから考えてるんだ』と言ったとしても、優花の心には『頼られていなかったんだ、私・・・』と思うに決まってる。
そうなると最悪だ!
優花が『別に言いたくなければいいけど』とは言わないまでも、その場の空気が冷え冷えになってしまうのは確かだ。
そう思ってると、最後通告のように、
「なに考えてる?」と、少し語気が強くなっている感じに聞こえた。
哲也は意を決して、思うままに話し始めた。
「俺は優花から頼られてるってことをよくわかってる。で、俺は優花のことを心の底から頼っているのだろうかと、そんな疑問が湧いたんだ。こんなことを思うってことは、心の底から頼れない自分がいるのだと思う。
頼るより、頼りにされるのが男だと思ってるから、物理的なことは頼れても、精神的なことは心の底からは頼れないと思っている自分がいるのだと思う。
そして、そして、もし精神的なことも頼ってしまうと、優花に依存してしまうんじゃないかと、それが怖いのかもしれない。
依存してる俺ってみっともないし、子供みたいだし。それに、こうしていつも自分の素の気持ちを言ってる俺って、小さな子供がお母さんになんでも思ったことをしゃべってるようで。
これって大人の男としてどうなん?って!最近の俺って、優花の前で素直に思った気持ちを伝えてるけど、なんか最近の俺って子供のようになんでも思ったこと話して。
そんな俺って、子供っぽくて、頼り気なくて、もっとクールさを持った大人の男じゃないと、優花に頼りなく思われて、しまいには飽きられてしまうんじゃないかと・・・」
「私の前では子供でもいいやん!素のままでいて!!」
哲也は優花の『素のままでいて!!』の言葉に、ジ~ンとした。心の中に日差しが降り注いだかのように温かいものが広がっていく。と同時に心の底から嬉しくて、涙が溢れそうに目頭が熱くなる。
なにかずっと心の中に持っていた足かせから解放されたように、自由と言うより優花という存在に救われた気がした。自分の存在が認められた気がした。
「哲也がいつも私の前で素のままでいてくれるから、私にはそれがとても嬉しいの。そんな哲也から私は必要とされているといつも感じられてるの。だから私も哲也に素の自分でいられるし、安心して哲也に頼れられるの」
「優花が大好き!」
「私も哲也のことが大好きだよ」
人間関係で、特に男女関係では相手が望ましい自分を演じたくなるものかもしれない。自分が背伸びをするほど、自分を無理に演じようとするほどに、いつか気疲れしてしまう。
そんな気疲れした素の自分は、自己嫌悪の塊。そんな自分を愛してもらえるとは思えないと思うほど、人はそこで「どうせ私は」と思いながら、負の関係のスパイラルをつくってしまうのかもしれない。
人は誰もが心の底では、誰かから頼りにされたいと望んでいる。
頼り、頼られる関係をつくることができれば、そこに『信頼』が生まれ、それもまた『愛』につながる大切な言葉なのである。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
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