エピローグ

 

 光曉和尚は、お寺の本堂の屋根に薄っすらと積もった雪を見ていた。そして、彼女のことを思い出しながら、『今頃幸せで暮らしていることだろう。』と呟き、粉雪が降る空を見て身振りをしたのだった。

 

そんな雪の降る寒空の中、傘をさして境内に入ってくる参拝者がいた。

家族連れできたのか3つの傘は、しっかりとした足取りで本堂ではなく母屋の方に歩いてきた。和尚は何かと思い、玄関へと向かった。

 

「ごめんください。和尚さんいますか。」と、女性の声がした。

和尚が玄関に着くと、見覚えのある女性が立っていた。

 

「和尚さん、お久しぶりです。ご無沙汰していました。」と言って、その女性は和尚の顔を見るなり涙を流して再会を喜んだ。

和尚もそれが誰かすぐにわかった。それは、紛れもないあの彼女だった。

 

彼女は和尚に紹介した。

「うちの主人です。そして、3歳になる息子です。あれから夫と出会い結婚しました。」と。

 

彼女は、和尚との心のセラピーを終えた後、偶然街角で『心の中の戦争を止める時かも。』と、お店で言われた男と会った。そして、二人は運命的な出会いを感じて恋に落ちたのだった。

 

和尚は、彼女とこの夫とが出会った奇跡のような出来事に、二人が結婚したのは運命による導かれた必然なような気がした。

 

『人生の中で、どこでどう人と巡り合うのかわからない。でも、だからこそ、人は人に生かされているんだな。』と、和尚は思った。

そして、『人が幸せに生きているという姿は、本当に人の心を豊かに幸せにしてくれるものだ。』と思いながら、降っていた雪がやんだ空をしばらく見つめていたのだった。

 

 おしまい。

 

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