モテ期②

 


その男は、やはりその男集団の中心的存在のようだった。その男は、彼女をやたらと褒めまくった。その言葉を浴びせられた彼女は、極度の嫌悪感を抱き、殺意があるほどに感情剥き出しでその男を睨み付けた。

 

男はその彼女の表情に、おっかないといった表情をしながらも、さらにその彼女の表情がかわいいと褒めた。

 

その時男が、彼女を見て何かに気づいた。そして、彼女が中学校の同級生だと言うことを思い出した。

 

「おまえ同じ中学のクラスメートだったよな。俺だよ、俺。」と言って、男は見違えるほど綺麗になった彼女を、足のつま先から頭の上まで舐め回するように、嫌らしい目つきで見まわした。

 

彼女は、その言葉を聞いて緊張した。そして、当時のことを体が覚えていて恐怖が背中を走り抜けた。

 

その男は、急に馴れ馴れしい態度になって彼女に話し掛け、これから一緒に飲みに行こうと執拗に誘った。男が睨み付けている彼女の腕を掴んだ瞬間、『パシッ!』と彼女は男の頬に平手打ちをして、急いでその場を立ち去った。

 

男は、女に不意の平手打ちをくらって茫然としていた。男は友達の手前バツが悪くなったのか地面に唾を吐き、走り去っていく女の後姿に何事が叫んでその場を去ったのだった。

 

彼女は、恐怖で体を震わせながら駅へと向かった。そして心の中で男を罵った。

『あいつは人を人とも思わないことをしていたのに、足が治ったら急に女を見る目で馴れ馴れしく近づいてきて、絶対にゆるさない!』と言って、悔しさで涙が溢れたのだった。

 

 

駅に向かう途中、彼女はまた男から声を掛けられた。しかし、今度は名前を呼ばれて、しかも聞き覚えのある声だった。

 

声を掛けて来たのは、同じ職場の男性社員だった。その男性は、彼女が泣いている顔を見て、驚いて声を掛けたのだった。

 

つづく

 

 

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