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◇心の底から自分らしく生きるメソッド◇

『光曉和尚の愛と心のセラピー物語』

~私、もっとストイックになりたいんです~

 

§ 彼と別れた原因

 

前回、瑞枝は自分のマイナス思考の体験が、世の中の人への贈り物になることを知った。そして、マイナス思考から脱却して幸せになることを強く思い、新しい彼ができたときに同じことを繰り返さないためにも、彼と別れた原因を和尚から説明してもらうことにしたのだった。

 

「瑞枝さん、今、来たときとは比べようのないぐらい生き生きしてますね」

「そうですね。すごくらくな自分がいます」

 

 

瑞枝は、先週後輩の優衣と会った翌日の土曜日、彼氏と会っていた。そのときも、彼氏と些細なことからケンカになりなんとかその場は収まったが、気まずさは今までにないものが残った。

 

彼が瑞枝の家から帰った後、瑞枝は自己嫌悪と罪悪感で押しつぶされそうになった。それから瑞枝は、なにも手がつかなかった。瑞枝自身もここまでなにもしたくない気持ちになったのは、はじめてだった。

なんだかんだケンカになっても、食器を片づけるぐらいの気力はあった。掃除が趣味というぐらいきれい好きなキッチンは、この日ばかりは食べた食器で埋め尽くされたままになっていた。

 

瑞枝はソファーに座りクッションを抱きしめたまま、これで彼との関係が終わってしまうのではという恐怖感が、瑞枝を幾度も襲った。その度に泣き続けたものの、今はもうその涙も出なくなっていた。そして気がつけば、ソファーの上で朝になっていた。

 

目を覚ました瑞枝は、携帯のメールに彼からの着信があるのを期待したが、画面に着信を知らせるものはなにもなかった。昨日のことは夢?と一縷の望みを抱いたが、キッチンを見た瑞枝は、その残った食器が昨日のことを現実だったことを思い出させた。

自然と手の中にあるクッションに力が入り、今はそのクッションだけが唯一自分を慰めてくれていた。

 

そして、彼とのその日がやってきた。瑞枝にとっては、魔の金曜日になった。

 

夜遅く彼が瑞枝の家にやってきた。その前に電話で「話があるからそっちに向かう」と連絡があったのだった。

 

瑞枝は、彼との会話で今まで味わったことのない事務的な電話に、どこかでわかっていたものの恐怖が込み上げてきた。

 

彼は瑞枝の家に入ると、いつもの定位置であるソファーの右側に座ると言った。

「もう終わりにしよう。一緒にいるのが正直しんどい。このまま続けて行っても同じことの繰り返しにしかならないから」

「どういうこと、なにがしんどいの」

「一緒にこれ以上いることがしんどいってこと」

「なにがしんどいか、はっきりいわないとわからないじゃない」

「会えばケンカばかりになるし、別れよう」 そう言って彼は立ち上がった。

 

「なにがしんどいか、はっきりいわないとわかんないじゃない!はっきりいってよ!」

「別れよう。俺の荷物は適当に処分しといてくれたらいいから」

「私には別れる理由がわからないから、なにがしんどいかちゃんと説明してよ!」

「しんどいに理由もなにもないから。じゃ」

 

「待ってよ!まだ話し終わってないじゃない!もう、いつも一方的で、私のなにがいけないのよ!はっきりいってよ!ね~黙ってないでいいなさいよ!!いわないとわからないままじゃない!!いいなさいよ!!いって!!いってよ!!!」

 

彼は喉まで出かけた『そのヒステリーがしんどいんだよ』という言葉を呑み込み、そして言った。

「じゃ、行くから。今までありがとうな」

「なにがありがとうよ!!いってよ!!いいなさいよ!!いって!!お願いだから!!いってよ!!」

彼は瑞枝の手を振りほどくように玄関に向かい、扉を開けてそのまま出て行った。

 

瑞枝はドラマのワンシーンのように玄関先でへたばるように座り込み、そしてそばにあった靴を扉に投げ付け茫然と扉を見つめていたのだった。

 

 

和尚は、改めて瑞枝から彼と別れた話を聞いていた。

「別れる理由がはっきりしないまま、結婚まで考えていた彼だっただけに、本当につらかったですね。今はどうですか。彼との別れは吹っ切ったように見えるのですが。まあ『ストイックになりたい!』といってここへ来るぐらいですからね」

「和尚さん、私のなにがいけなかったんですか。この際はっきりいってください。やっぱり別れた原因は、私が彼をしんどくさせてしまったからですか」

「いいえ、しんどくさせてしまったのは、原因ではなく結果です。なにかの原因で、そのような結果になったんです」

「やっぱり私が悪いんですよね」

 

「そうです。あなたが悪いんです!といったらどうしますか。せっかくさっき『私は幸せになります!』といったにもかかわらず、またマイナスのネガティブな感情に浸って、私のせいでといって自分を責め続けますか」

「いえ、それはもういいです。今はすべてを受け止めるつもりでいますから、彼と別れた正直なところを教えてください」

「わかりました」

和尚は瑞枝と話をしてきて、彼女の負けん気の強さを持っていることを感じ取っていたので、そこの部分をうまく引き出しながら話をすることにしたのだった。

 

つづく。

次回は、9月10日(火)「ヒステリックが別れた原因ではない」をお話します。

 

※この物語は、実話にもとづいたフィクションであり、登場する人物など、実在のものとはいっさい関係がありません。

 

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