20140414やる気

 

 

 

 

 

 

子供がほんとうにほしいもの(物語)③

 

 

ゆかは、マサには言わなかったけれども、なぜか確信があった。
人ごみを縫う様にして、ゆかは絶叫マシンの方へ小走りに急いだ。

 

 

ゆかの目に飛び込んでくる風景は、方向を定めるハイテク機器のように、
瞬時に歩く方向を微調整しながら、足の向くままに歩を早めた。

 

 

絶叫マシンのところまで来ると、そこは多くの人でごった返していた。

 

 

人ごみがゆかの行く手を遮ったが、ゆかの頭のアンテナは、
人ごみに遮ぎられることなく的確な方向を示していた。

 

 

ゆかは、絶叫マシンの橋げたを何本もくぐり抜けながら右手に反れた。
植え込みが左手に続き、濃いピンク色をしたつつじの花に沿って歩いて
いると、突然ゆかの頭にミニーの顔が浮かんできた。

 

 

その瞬間、『愛ちゃんは近くにいる!』と直感的に確信が持てたのだった。

 

 

おもむろにゆかはスマホを取り出し、マサに連絡を取った。

 

「マサ、そちらはどう?!何か情報があった?」

 

 

マサは「いや特に今のところないけど、ゆかの方はどう?」と聞くと、
電話口から悲鳴に似た驚きの声が聞こえてきた。

 

 

「ゆか!ゆかどうした!何があった!」と言うと、
プープーと電話の切れた音がしていた。

 

 

掛け直す電話にゆかは出なかった。何度も掛け直したが同じだった。
マサは、すでに走り出していた。

 

 

この時だけは、マサのいつも緩んだから顔から笑顔が消え、
真剣な眼差しで絶叫マシンの方角へ全速疾走で駆けていた。

 

 

マサは、すれ違う人たちとぶつかりながらも、
スピードを落とすことはなかった。

 

 

絶叫マシンの乗り場が見えてくると、
人ごみに混じってゆかの笑顔が見えた。

 

 

「ゆかー!」マサは叫びなら、ゆかのところへ近づいた。
「ゆか!大丈夫だった!」
「うん、ありがとう。ごめんね。マサと電話してたら愛ちゃんを見つけたの!」

 

マサは、ゆかの傍らにいるミニーのTシャツを着た愛ちゃんを見たのだった。

 

 

次回「子供がほんとうにほしいもの(物語)④」に つづく。

 

 

いつもお読みいただきありがとうございます。
 

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