『§まっすぐに生きるのが一番』
「第78話:“お陰様の心”が生き方を育む」

 

 

哲也が意図しないまま「殺し文句」を言った瞬間から、哲也と優花はお互いを認め合った唯一の存在として、恋人同士の関係になった二人の物語。

 

 

前回は、日々の中で生きていることがすでに“体験”だから、日々の中で“感謝の心”を忘れない生き方をすることが、人生の幅も広げるお話をしました。

 

 

今回は、感謝することは誰もがわかっていることですが、感謝でも“お陰様”と思える心が、生き方に違いがでてくるお話をしたいと思います。

 

 

 

「優花の家におばあちゃんが来てから、優花はものすごく積極的になったし、人としてもすごい考えをするようになったよな」

 

 

「そお?そう言う哲也もおばあちゃんと出会ってから、いい意味で変わったね」

 

 

「そうかな、でもおばあちゃんはすごいよ。生きる知恵を教えてもらっているよ。

 

 

さっき“感謝”の話をしていて思い出したんだけどさ、仲のいい人事部が言っていたんだけど、“感謝”の気持ちが伝わってくる学生は魅力を感じるって。

 

 

ただ“感謝”と言ってもいろいろあるみたい。

 

 

例えば、学生からエントリーシート(会社独自の履歴書)を送って来てもらって自己PRを読んでると、

 

 

『アルバイトの接客をしていて、お客様に気配りをすることで褒められて“ありがとう”と言ってもらえたことが嬉しかったです。これからも“ありがとう”と言ってもらえるように心がけて頑張っていきたいです』

 

 

のような自己PRがあるんだって。

 

 

一見いい感じに思えるかもしれないけれど、メーカーのうちの人事はこう思うんだって。

 

 

・人と関わる体験が乏しそうだな。
・仕事をしていくにはまだ幼い感じがするな。
・嬉しかった体験をどう工夫したかなどがほしいな。

 

 

“感謝”の気持ちはもっているけれども、もっと深い人間関係を経験してきた人がいいんだって。

 

 

そいつが言うには、“有り難味”や“お蔭様で”という体験から出てくる“感謝”が伝わってくる自己PRは、魅力的で、会ってみたいって思うんだって」

 

 

「なんかわかる気がするわ。さっきも言ったけど、“有り難味”や“お蔭様”の気持ちが伝わってくるのは、

 

 

その人が、苦しいことや辛いことがあって、誰かに助けてもらったり、支えてもらって、心から“ありがとう”と言える体験をしてるから出てくる言葉だよね。

 

 

“有り難い”や“お蔭で”という気持ちがあるから、人になにかお礼じゃないけど、自分にできることで恩返しをしたい気持ちになる。

 

 

そんな人は芯がぶれない真心からの動機だから、人のために、誰かのために何かをしようと、自然と工夫したり、気配りや心配りができるんだろうね。

 

 

やっぱり体験が浅いというか少ないと、まだまだ自分が満たされたい欲求の方にフォーカス(焦点を当てる)されて、

 

 

ときに自分がしたことに対して相手が反応してくれなかったりすると、不平不満を言ったりするのかもしれないわね。
“これだけやってるのに”ってさ」

 

 

「それすごくわかる。文句を言うやつってそんな感じだよな。

 

 

でもさ、日々代わり映えのない仕事や生活をしていると、いろんなことがあたり前に思えてきて、いろんな辛い経験をしてきた人でさえも、ついつい“有り難い”や“お蔭で”という気持ちを忘れてしまうよな、って思ったわ」

 

 

そうね、自分なりにがんばって生きていると思うと、人のことが見えなくなって、ついつい“有り難い”や“お蔭で”という気持ちを忘れてしまってるかもね。

 

 

私たちって、食べる物も着るものも住むところも、今あるすべての物は、誰かの手によって造られているんだよね。
誰かのお蔭で、支えられて生きているんだよね。

 

 

その恩恵を受けて、私たちは今、生きてるんだよね。

 

 

私たちももっと、ものごとを当たり前と思わずに、日々“有り難さ”や“お蔭で”の心を持って生きていきたいね。

 

 

おばあちゃんって、この“有り難さ”や“お蔭で”という気持ちを持って、日々生きてるのかな。いろんなことを思い返すと、そう思わない?」

 

 

「うん、そう思う!だから優しい気持ちにもなるし、優しさが伝わって来るのか!」

 

 

「えっ、なになに」

 

 

「たいしたことないよ。まあ、もっと優花に優しい男でありたいということかな」

 

 

優花は哲也が言っている言葉の意味はよくわからなかったけれども、哲也が言った言葉から伝わる心地いい響きに、安心感のある幸せを感じて、それでだけで満足する自分がいたのだった。

 

 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。
 

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