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 第四話『本当の恋の予感』

 

 
 恭子は、店長と健太郎との会話を楽しんでると、急に店長に話を振られた。

 

 
 「ところで恭子ちゃんは、今彼氏いるの?ま~これだけ可愛くって仕事もよく気が回るから男がほっておくわけないか。」

 

 
 「私、いないですよ。店長、私のことそんなふうに見てたんですか。」
 「そ、そりゃ仕事がよくできて本当に助かってんだから。」
 「そっちじゃなくて、初めに言った方ですよ。」

 

 
 「な、なんか俺言ったか。」
 「ギシ、お前この子に下心もってるな、奥さんに言いつけるぞ。」
 「お、俺は加奈一筋だから、何言ってんだよ。お前に女っ気がないから気を遣って恭子ちゃんにわざわざ来てもらったんだよ。」

 

 
 「店長の奥さん、かなさんって言うんですか。かわいいお名前ですね。店長と奥さんラブラブなんですよね。お店で評判ですよ。」と言って、恭子は店長の方を向いて笑ったのだった。

 

 
 「お、俺の方はどうでもいいんだよ。」
 「店長、顔、真っ赤になってますよ。今日の店長かわいい。」
 「バ、バカ何言ってるんだよ。健、健太。お前彼女できたのか。もう28(歳)だろう。そろそろ彼女見つけたらどうなんだ。」

 

 
 「おいおい都合が悪くなったからって俺に振るなよ。」
 「健太、恭子ちゃんはどうよ。この子はめちゃくちゃいい子だぞ、どうなんだよ。」
 「急、急に振るなよ。恭子ちゃんも選ぶ権利があるんだから。ほら恭子ちゃんも困ってるじゃんかよ。」

 

 
恭子は急に振られて、ドキドキして恥ずかしくて思わず下を向いたのだった。店長はたたみ掛けるように言った。

 

 
 
 「ほら健太。今度いつ恭子ちゃんとデートするんだよ。その前に連絡先、早く聞けよ。何してんだよ。ほら、だからいつまで経っても彼女できないんだよ。早く!恭子ちゃんもいいだろ。

 

 
今度こいつとデートしてやって。俺から言うのもなんだけど、こいつは本当に人を大事にする奴だから、一度だけでもいいから食事付き合ってやって! ほら恭子ちゃんも携帯出して、赤外線!健太もほら早くしろよ!」

 

 
恭子と健太郎は、店長の反撃とも取れる勢いに呑まれて、赤外線で連絡先を交換したのだった。

 

 
 「健太、帰ったら恭子ちゃんに即メールするんだぞ!なんだよその顔!鳩に豆鉄砲みたいな顔して!お前このままじゃデートの約束もしないだろう!じゃ俺が決めてやる!水曜日の夜7時に百貨店のある銅像前!お店は健太が予約しとけよ!恭子ちゃんもわかった!決まり!!ハー疲れた!飲み直しだ!」

 

 
店長は一仕事やり遂げたかのようにジョッキの生ビールを一気に呑みほし、もう一杯注文したのだった。

 

 
 
恭子が家に着いた頃に、健太郎から早速メールがあった。恭子は携帯を見ると、絵文字も何もない殺風景なメールだったけれども、健太郎の人柄が良く伝わってくる文章だった。

 

 
恭子は、すぐに返事を書いて送信した。また健太郎からすぐに返事が来ると思って待っていた恭子だったが、しばらく待っても返事は返ってこなかった。健太郎に好意を持ち出していたところだっただけに、恭子は不安になった。

 

 
『なんだ、店長に言われたから仕方なくなんだ!』

 

 
そう思ってシャワーを浴びに行こうとした時に、健太郎からのメールの着信があった。恭子は飛びつくようにメールを見ると、微笑ましい顔になりながらすぐさま健太郎に返信した。

 

 
恭子は健太郎から「女性とメールすることがなくて、どう書いたらいいのかずっと携帯の画面を見てたら返事が遅くなってごめん。」というメールを何度も読み返して、思わず『クスっ』と笑いながら、恭子はとても優しい気持ちに包まれたのだった。

 

 
つづく。

 

 

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