「彼女へのアプローチ」

 

ライブは、彼女からの丁寧な予習のおかげで、一体感を感じて大満足のいくものでした。というより、どこかにいる彼女とこの時を一緒に共有できたからといった方がいいかもしれません。

 

ライブが終わり、観客はまだ大興奮覚めやらぬ状況の中、私はまた彼女と帰りに会えるのではないかと淡い期待を持っていたものの、人混みにのまれてあれよあれよと帰宅したのでした。

 

私は「彼女から連絡が来るかな~」と、携帯電話をいじりながらそわそわして待っていたものの、久しぶりの人混みに疲れたのか瞼の垂れ下がってくる重みには耐えきれず、早々と眠りに就きました。

 

私が眠りに就いてしばらくすると、携帯電話のメールの着信音が鳴りました。私は半分虚ろ気に布団の中から携帯電話に手を伸ばして見てみると、あの彼女からでした。

 

「夜中にメールしてごめんなさい。今日はありがとうね。しゃべりやすくて楽しかったよ。寒いから風邪ひかないように気をつけてね。おやすみ。」と、 たくさんのかわいい絵文字付きのメールに、もう言わずと知れず、私は幸せいっぱい夢心地で朝までぐっすりだったのでした。

 

 

翌朝、私は彼女からのかわいい絵文字がいっぱい付いたメールを何度も見ては、超~ハイテンションになりながらも、

 

「あかんあかん、あんまり期待したら。社交辞令かもしれん」と、自分に言い聞かせつつも、ハイテンションになっては、の繰り返しでした。

 

私はその日、これから彼女ともっとつながりを持ちたいと思い、 「これは自然で健全な感情なんだ」と訳の分からないことを言いつつも、暇ができるとそのことに多くの時間を費やしていたのでした。

 

 

私は直感的に、彼女に私がオリジナルで書く物語を読んでもらおうと思い立ち、早速彼女にメールをしました。

 

「文章読んだり好きな方?」と私が送信すると、しばらくして返信がありました。

「本とかってこと~?!小説とかはあまり読まないかなぁ。」

「ぎょぎょ!!」と、一瞬怯みかけた心を鼓舞しながら、私は彼女からメールが無かったかのよう彼女に返信をしないまま、1時間後に次のような文章を書いて送ったのでした。

 

*****

 

朝から降りだした雨は、寒さと相まって余計に寒さを感じさせた。 週末からやって来る寒波のことを思うと、襟元を立てずにはいられなかった。 女性は襟元が立っているのを確認すると、足早に駅へと向かった。

 

駅に着くと、朝のラッシュで人が多いこともあって暖かく感じられた。しかし、ホームで電車を待つ時間は寒く、電車が来るまでの時間はさらに寒さを感じさせた。

 

電車が到着すると、その女性は空いてる席に滑るように座った。 ほっと一息ついたその女性は、はめていた手袋を取ってカバンの中に入れると、見える車内を遮断するかのように目を閉じたのだった。

目を閉じたその女性は、自分の体の外側から、特に足元から暖かくなってくるのを感じた。

 

しばらくして、車内の暖房に寒さを感じなくなるぐらいになって来た。けれども、まだ完全に寒さが癒えない自分に気づいた女性は、 『心までは無理か!』と思うと、独り苦笑いをしたのだった。

 

その女性は…つづく

 

「こんな文章好き?つづきは感想聞いてからかなぁ…笑」と。

 

******

 

しか~し、待てども彼女からの返信はなく、私は、物語が中途半端に終わっていたというとっても都合のいい理由を作り、物語を完結させて送ろうと、次のような物語の続きを送信したのでした。

 

さて、このメールは吉と出るのか凶と出るのか…。

 

 

次回6月11日(火)「物語の続き」につづく。

 

 

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