「あるがままの自分と我儘な自分(後半)」
『§まっすぐに生きるのが一番』
「第30話:あるがままの自分と我儘な自分(後半)」
前回、優花は哲也に、『我儘な自分と自分らしいあるがままの自分が、なんなのかわからなくなってきた』とテーブルに視線を落した。
今回、哲也は優花がテーブルに視線を落すのを見ながら、優花の言うとおり面倒くさい女で、なにか重たく感じたかどうかの続きのお話です。
哲也は優花が下を向いている姿を見ながら、どう答えたらいいか考えを巡らせた。
哲也は再度「今のままでいいと思うけど」という言葉を言い掛けて、言葉を呑みこんだ。
哲也は思ったのだ。
もし「今のままでいいと思うけど」と言ったなら、「うそ!ほんとうはそう思っていないことぐらいわかってるから、ほんとうのこと言ってほしい」と、堂々巡りの話になる。
ようやく彼女が納得したとしても、自分が“今の我儘な優花でもいいと言った”と、そう理解するのではないか。
しかし、のちのち彼女の我儘が度を超えて自分が注意することがあった時に、彼女の性格からしたら、
『あのとき今の我儘な自分でいいって言ったよね。悪いところがあったら直すって何度も聞いて、それでもこのままでいいって言ったよね。今さら蒸し返すようなこと言わないでよ』と、言い返されるかもしれない。
そなったら優花が言うように面倒くさい女だ。そう考えたら、面倒を避けるために我慢し続けた方がいいと思う自分がいて、そう考えると気が重くなる。
再度「今のままでいいと思うけど」と言ってしまうと、優花の言うとおり面倒くさい女で、気が重たく感じても、“無条件に優花を愛してる”と宣言してしまうことになる。
もちろん今もこれからもずっと、優花への愛は変わらない。でも、なにかが違う。いや待てよ。優花は“こんな自分でも愛してほしい”と言っているわけではない。
自分で自分のことはわかっていて、それを直そうとするけれども、『我儘な自分と自分らしいあるがままの自分が、なんなのかわからなくなってきた』と言っていたのだ。
そうだ。自分の彼女の話の理解不足が、あやうく優花が望んでいないとんだ方向へと行くところだった。
でも、哲也が優花に言う言葉は同じだった。
「今のままでいいと思うけど」
“うそ!ほんとうはそう思っていないことぐらいわかってるから、ほんとうのこと言ってほしい”と言う優花の言葉を回避して、
「我儘な自分と自分らしいあるがままの自分を区別するなんて、そんなのできないと思う。そもそも区別すること自体が間違ってる気がする。どれが我儘な自分で、どれが自分らしいあるがままの自分なんて、そもそもわかんないよ。だって、人間両方あると思うから。
自分でもそんなことわからないから、自分が我儘なことしてたら、その時に優花が言ってくれたらいいし、僕も気になったら言うし。
自分のやり方や思いって、自分が経験して上手くいったことがベースになってるような気がするから、それで上手くいけばそれでいいし、上手くいかなければ間違いを認めて訂正すればいいし。
でも、自分が上手くいっていると思っていても、相手がそれに気づかずにいるときもあって、それを相手に上手く伝えられないこともあるだろうし。
それよりも、優花が言ってくれた『これからもずっと仲良くしていきたい』と思っていたら、そんなお互いを認め合う関係を続けて行けたら、いろいろ話し合って解決できると思う。
それよりも、こうやって話し合える時間をお互い作れるかの方が大事なのかもね。
先輩も言ってたけど、今はまだ付き合ってそれほど時間が経っていないから、お互い日々新鮮で刺激を受けることが多いけど、やっぱり時間が経ってくるとマンネリ化する部分があると思うし。
それはそれでお互いが一緒にいて、楽で安心できる信頼がどこかにあるから我儘な自分も出せる状態だと思うし、それを相手が気にならない我儘なら、それはあるがままの自分なのかもしれないと、自分はそう思うかな。
今“マンネリ化”って言って気づいたんだけど、それってお互いが平穏で幸せってことかもしれないって思ったんだけど、その“平穏で幸せ”が当たり前になっているのかもしれないってね。
そう言えば、SNSで“ありがとう”って言う感謝の反対は“当たり前”ってあったけど、気がついたらしてもらえることが当然で、感謝と言う有り難味の言葉を忘れてしまっているのかもしれないね」
「哲也すごい!話を聞いて納得。哲也が言うように、ほんと私もそう思える。悩んでいた私の気持ちもスッキリしたわ。これってどの本に載っていたの?私も読んでみたい、どんなタイトルの本だったの?」
「えっ!本ね・・・アハハ、いろんな本を乱読したからどんな本って言われても・・・」
「ね、今度哲也の家に行っていい?家にあるんでしょう。じゃ私がその本を見つけるから、見つけたら借りてもいい?」
「ああ、いいけど・・・」
「じゃ今から行く?男の人の部屋って汚いって言うけど、哲也もそう?じゃ、掃除も兼ねて本を探したら一石二鳥ね」
「えっ、今から?今日?」
「あっ、そうようね。今日の今日はさすがに迷惑だよね。私興奮しちゃって、ついその本が読みたくなっちゃって、ごめんね。急に変なこと言って」
哲也は違う意味で興奮しながらも、掃除の最中に決して彼女には見つけられたくない“男の秘密”を見つけられることに焦ったのだった。
我儘な自分とあるがままの自分。
両方が人の中に混在している。
でも、自分のことはなかなかわからないもの。
だからこそ、人との関わりの中で、
時に試行錯誤し、時に切磋琢磨しながら、
自分と言う存在を知り、
自分について考えることが大切なのかもしれない。
ソクラテスの言葉にもこのような言葉があった。
『汝自身を知り、汝自身について考えよ』
この言葉の真意を知るとき、
人は人生の目的へとさらに導かれる気がします。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
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