「とんでもない一言」

 

彼女との日々のメールも順調で、私は、彼女と会っていない時間が、もう何週間も会っていない感覚になり、またすぐにでも会いたい気持ちに駆られていた。

 

メールの中でも、私が彼女にそんなことを言うと、彼女も同じようなことを返してきてくれていた。

 

 

私は、彼女との波長が合い、話をしていても価値観もあうと日に日に感じて、しかも、彼女もまだ会ってから1週間も経っていないのに、もう何週間も会っていないと言ってくれた言葉に、私はますます運命の予感を強めていったのだった。

 

さらに、彼女との“運命”を根拠づけるように、「男性は母親とよく似た人を、女性は父親とよく似た人を結婚相手に選ぶ」と言われることがあって、まさしく彼女はそんなふうに思わせる女性だった。

 

これまでのデートの中でも、私は、彼女が母親に似ていると感じることが多々あり、あるとき私は、彼女の干支を当てたことがあった。

 

彼女も当てられてびっくりしていたが、その干支はまさしく母親と同じ干支で、しかも血液型までも同じだった。さすがに星座までは同じではなかったが、よく似ている部分を多く感じていた。

 

私の彼女へのそんな思いを積み重ねることによって、私はますます彼女を“運命の人”と思うようになり、もうちょっとした変な自信まで出て来ていたのだった。

 

そんな私の心の状態のまま、彼女と三回目の食事デートの日を迎えたのだった。

 

 

その日もお互いが気を遣うこともなく、会ったときから気がつけば話しが盛り上がっていて、はたから見れば付き合っているカップルにしか見えない情況にさえ思えた。

 

そんな気持ちの盛り上がった状態で彼女と話していたときに、ふと二人の会話に間が空いた。そのとき私は、なぜか、本当に無意識に彼女に次のように言っていたのだった。

 

「おまえ、俺のこと好きやろう!!」というと、彼女は、

「それはどうかな~」と、あっさり切り返されてしまったのだった。

 

私は、自分が無意識に言ったことにも驚きながらも、思わず彼女の返答に「えっ」と言って、固まったまま頭が真っ白になり、そのあとの会話を思い出そうとしても、私の頭の中からは完全に抹殺されてしまっていたのだった。

 

どうにかして彼女と駅で別れたあと、ようやく私は自分への意識が戻って来て、『なんであなんことをいったんや!!』と自分を責め、彼女からの返答を何度も思い出してはどんどん自己嫌悪になっていったのだった。

 

そして、私は同じようにこの「えっ」と言って、女性に振られたほろにがい失恋を思い出して、さらにこの恋のゆくえに追い打ちを掛けるように自己嫌悪になったのだった。

 

次回6月18日(火)「ほろにがい失恋 前半」につづく。

 

 

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