Ⅲ.恋愛期①

 

あくる日、彼女は職場に出かけたのだが、昨日の一件があって職場の男性と会うのが億劫だった。彼女は、どんな顔をして顔を合せたらいいのかわからなかった。
彼女が「おはようございます。」と小さな声で挨拶をすると、すでにその男性社員は職場に来ていた。彼は、彼女が来たことを知ったにもかかわらず、顔を合せるどころか挨拶すらしなかった。

 

彼女とその男性との間には、気まずい雰囲気が流れた。

 

その日から、その男性社員の彼女への嫌がらせが始まった。その嫌がらせは日に日にエスカレートして行き、周りの人たちも気づいていたが、その男性社員がこの店の中核メンバーであったため、誰も何も言えなかった。

彼女は自分が悪いのだと我慢して働いていたが、その男性社員の嫌がらせによる仕事のミスは、店長にも目に突き出して、毎日怒られる日々が続いた。

そんな日々が続いた反面、彼女は職場で働く2人の男性から告白された。彼女にとって、2人ともとても優しく誠実な人だったので、嬉しい気持ちにはなったが、それを受入れる精神的余裕がなかったために、2人とも丁重にお断りをした。

2人の男性は、彼女の返事をきっちと受け止め、その後もいつもと変わらない優しい態度で接してくれた。彼女には、彼らの紳士的な態度が救いだった。これ以上、職場内でぎくしゃくすると精神的にもたないと思った。

しかし、あの男性社員の嫌がらせは、終わることなく続いた。店長にはわからないように巧みに嫌がらせをした。とうとう彼女は店長から呼ばれ、この仕事が向いていないと言われた。それは事実上の退職勧告だった。

彼女はこの時すでに、頑張れる気力も精根も尽きていて、この職場を去ることを決意したのだった。



彼女は食べるために、次の仕事を探さなければならなかった。

求人情報に目を通していた彼女は、時給もよく、女性スタッフ多数在籍という文句に魅かれて、パチンコ店で働くことになった。

手取り給料は、前の職場よりも多くもらえた。しかし、思っていた以上に重労働で、しかも長時間労働の上に休日も人がいないからとほぼ休まず出勤していた。

ほぼ毎日お店と家の往復で、たまの休みはほとんど寝て過ごした。そうしないと体がもたなかった。

 

ある時、店に来る常連の男性から食事に誘われた。前々から何度も食事に誘われていたが、休みがなく行きたいと思っていてもその時間が取れなかった。

だがこの時は、次の日が休みだったことを思い出し、彼女は息抜きもしたくなり、食事だけならいいかと、安易な気持ちでその男性と食事に行く約束をしたのだった。

 

 

つづく



 

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