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◆心の底から自分らしく生きるメソッド(実践編)◆

「光曉和尚の愛と心のセラピー物語」

~私、自分らしく人生を生きます~

 

§ きれいな一筋の涙

 

 

前回、瑞枝は心理ゲームの三つ目の質問の答えを、和尚が深く掘り下げて解説したことで瑞枝の心の奥の琴線に触れ、涙が溢れ出てきた。その横で、急に有里が姿勢を崩して嗚咽を漏らし出したが、瑞枝は姿勢を崩さず毅然とした態度のままいたのだった。

 

和尚は、誠が和尚に心配する目をしたが、有里がそのまま感情を感じるままにさせた。

 

一方、瑞枝は流れる涙を拭おうともせず、毅然とした態度を崩さなかった。和尚が差しだそうとしたティッシュも断り、瑞枝は強い意志のある眼光で和尚を直視して静かに言った。

 

「私は、自分が酷い最低な人間で、自分のことが大嫌いで、私が一番こんな自分が嫌だということも知っています。ほんとうにもう、やめれるものならこんな自分をやめたいです」

 

和尚は、瑞枝の眼光鋭く人を射すめるような思いの目に、ぐっと来るものを感じた。そして言った。

 

「瑞枝さん、そのために、あなたはこのお寺に駆け込んで来たのではないですか。ストイックになりたいと思ったのも、本当に幸せになりたいと思ったからではなかったですか。あなたが幸せになるために。あなたが思う普通の幸せを手に入れるために。

瑞枝さん、私はあなたのなかに光を見ています。あなたの価値を見ています。そしてあなたの幸せになっているビジョンを見ています。

 

あなたが言うように、マイナス思考でいた時間が長かった分だけ、手間が掛ります。感謝の日記帳も習慣付けるまで手間が掛ります。

そんなふうになれる自分を信じ続けるのは、人は誰しも簡単なことではありません。嫌になるときも、やめたくなるときも、やってることすら信じたくなくなることもあるかもしれません。

それでもいいんです。また思い出したら、今のこの気持ちに戻って来ればいいだけですから。もしそうなったら、私はあなたがここへまた戻って来ることを、毎日ドキドキしながら信じて待ち続けますから」

 

瑞枝は、和尚がドキドキしながら待っている姿を思い浮かべて可笑しくなった。でもそのドキドキの言葉に和尚の人間味を感じる温かさを感じて、自然と笑みがこぼれたのだった。

 

「瑞枝さん、最後にもう一つだけいいですか。側にいる有里さんを見てください。いつも明るく振る舞っている彼女だけれども、瑞枝さんあなたと同じように、誰にも言えず悲しみや苦しみを抱きかかえながら生きてきたのがわかりますか。

“中身はおっさん”と何度もそう言って、女性である自分を茶化さないといけない彼女の心の痛みがわかりますか。

瑞枝さん、有里さんには、あなたにしかわからないあなたの力を必要としているのです。できることでいいです。彼女をサポートしてあげてくれますか」

 

瑞枝は有里をしばらく見ていた。そして近寄り、背中をさするようにすると、有里は瑞枝に抱き付き感情の堰を切ったように号泣した。

 

和尚はそばで驚いて誠が見ていると思いきや、誠の二人を微笑みながら見守る姿は、本当に大きな慈愛のエネルギーで二人を包み込んでいた。

 

和尚は、一般的に男性は、このような女性が感情的な場面になると、どうしたらいいのか戸惑いがちになるのだが、感受性豊かな誠だから一緒に共鳴して癒されてる?と、和尚は誠の微笑みのわけの真相を掴めないでいた。

 

 

瑞枝は、有里に抱き付かれ号泣されて戸惑った顔になっていた。和尚は、瑞枝が人前で泣く自分が嫌いだと言っていたので、瑞枝の反応をみていた。素に戻って傍観しだした瑞枝の反応をみて、和尚は瑞枝に言った。

 

「瑞枝さん、有里さんの心に寄り添ってあげてください。

あなたが人前で泣く自分が嫌いなのは、その人のそばにいても何もできなくて、結局はその人のことはその人しかわからないから、自分も自分のことをわかってもらえることがないと思っているから、その人の助けにならない自分を無力に思っているのではないですか。だから気持ちは素で傍観したまま寄り添っているような振りをするのですか。

そしてまた偽善ぶっている自分を人間として醜いと思うのですか。人はときになにもしなくていい時があるのです。ただ側にいるだけでいいときがあるのです。

 

瑞枝さん、彼女になにもしなくていいのです、今がそんなときです。ただただ、彼女を感じてください。彼女をまるで自分と同じように、悲しみや苦しみを持って生きてきたことをただただ感じてあげてください。

まるで彼女が自分であるように。目を閉じて彼女の声を体から伝わる温もりを、あらゆるすべてを彼女に意識して彼女を感じてみてください。ただただ彼女を感じてあげてください」

 

和尚は、温かい気持ちでその二人を見守っていた。しばらくして、瑞枝をよく見ると、瑞枝は何かを感じたのか、瑞枝の目を閉じた目から一筋の涙が鼻筋を通って流れいき、それはいくつもの筋となっていったのだった。

 

つづく

次回明日10月8日(火)は、

瑞枝の心の状況について、

物語メソッド実践編:「和尚との心の掛け違い」をお話します。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。 心より感謝いたします☆

 

※この物語の後半は、実話にもとづいたフィクションであり、登場する人物など、実在のものとはいっさい関係がありません。

 

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