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◆心の底から自分らしく生きるメソッド(実践編)◆

「光曉和尚の愛と心のセラピー物語」

~私、自分らしく人生を生きます~

 

 

§ 二つの心の思い

 

 

前回、瑞枝は心理ゲームすることで自分を客観的に知り、また他の第三者からの視点で見ることによって瑞枝自身の意識を広げっていった。そして、三つの質問のうち二つの解説が終わり、これから三つ目の質問の解説へと進むところだった。

 

※誠くんの登場回数が、極端に少ないと思われていると思いますが、あくまでも瑞枝がメインであり、また口数的には圧倒的に有里が多いのもあって、文字数のことも考え割愛しています。しかし、このメンバーを円滑に進めていくにあたっては、誠くんの存在はなくてはならない大きな潤滑油的な役割を担ってくれています。

 

 

さて、瑞枝は自分で疑い深いというように、和尚や有里が褒めてくれる言葉は他人事のように聞こえて、また和尚の口車に乗せられて、調子よく言わされていると思った。とは言うものの、瑞枝は自分が答えた心理ゲームの解説は気になっているようだった。

 

瑞枝が三つ目の質問の大きな白いスクリーンから出てきたのは、「貞子とお花」だった。その性質・特徴は次のようなものだった。

『貞子』:と言えば『怖い。(髪が垂れて)顔が気になる。髪が長い』

『お花』:と言えば『きれい。いい匂い。あたたかい。手間が掛る』

この質問の答えは、『自分は他人からどう見られたいか、思われたいか』

 

瑞枝の貞子という質問の答えに、早速有里が反応した。

「私も一瞬スクリーンって言われたから貞子のイメージ浮かんだけど、他人から貞子に見られたいってことやね。それとお花のように思われたいんやね。瑞枝ちゃんどう?」

「いやーさっぱりです。ただスクリーンっていわれたから映画の貞子を思い出して。あとはお花が浮かんだんで」

「そうやな、お酒の場だったら盛り上がってこれでいいんやろうけど、ここから自分がどうなりたいかって読み取るのは頭いるね」

有里も誠のときもそうだったが、質問の答えまでは想像できるのだが、瑞枝もそれ以上膨らませて、自分がどうなりたいかまでは言葉にするのは難しいようだった。

 

和尚は有里と誠のときと同じように、瑞枝にも解説を加えた。

 

「瑞枝さん、こういう場だからあえて深く突っ込んで解説をしていきますね。まず、今まで何百件とこの心理ゲームをしてきた経験から、二つ答えた人は記憶にないですね。でも瑞枝さんにとっては、とても良い傾向だと思います。

なぜかといいますと、瑞枝さんは、自分はマイナス思考といって自分を嫌っていますよね。この三つ目のスクリーンの質問で、けっこう「貞子や幽霊」と答える人が多いのです。その人の傾向として、自分をネガティブに捉えていることが多いのです。

そのような意味では、瑞枝さんはネガティブな象徴ともいえる「貞子」の他に、「お花」とポジティブなイメージを答えているのです。性質・特徴の言葉をみれば明白だと思います。

私がはじめに関わった印象の瑞枝さんなら、「貞子、幽霊」とだけ答えて普通だと思うのですがね。それがポジティブなイメージを答えるということは、自分の中でなにか良い変化の兆候が表れていると言えるのです。

 

瑞枝さんどうですか。

『自分は他人からどう見られたい、思われたい』の解説で、『私は、他人から“いい匂いのするきれいな、温かみのあるお花のように”思われたいんです』と言っているのです。

簡単にいうと、それが『自分がなりたいイメージ』なのです。瑞枝さんとの今までの会話からは、想像もつかないような言葉でしたが、言われてみてどうですか」

「そうですか・・・。そう思ってるんですかね」

「では、二人に聞いてみましょうか。瑞枝さんはお花のようなイメージではないですか。これからもそんなお花のイメージがなくて、貞子のようなイメージですか」

 

「瑞枝ちゃん、自分のことわかってないわ。ほんまにわたしよりかわいいし、きれいし、女性としての華もあるし、すでに持ってるし。誠くんはどう思う?」

「瑞枝ちゃん、僕も有里ちゃんと同意見だよ。女性としての魅力もあるし、和尚さんが言うようにお花のイメージのする人ですよ」

瑞枝は、二人が真剣に言うそれらの言葉に圧倒されつつ顔を強張らせて呟いた。

 

「私の本性を知らないからそう言えるんです。ほんまに自分は最低な人間で、こんな自分が大嫌いなんです。そんなふうになってみたいとは思いますけど、こんな私には無理なんです」

「そうです。瑞枝さんが自分でも言ってくれた、そんなお花になるには“手間が掛る”のです。そう思っているのです。だから、なにをやってもそんな自分にはなれないと途中で何度も諦めてしまって、もうこんな自分はと思って苦しんできたのではないですか」

瑞枝は大きく目を見開いて、和尚には心の奥を覗かれたような顔をしたように見えた。

 

「瑞枝さん、あなたが言った“手間が掛る”ことは正しいかもしれません。今まで何度もこんな自分ではダメだと思って、何度も何度も変わろうとチャレンジしてきたけれども、結局うまくいかずにいつまでたっても元の自分のままで。

そして、ときにそんな自分が、本当に悲しくなって苦しくってつらくなって、もうどうしたらいいのかわからなくなって、今までに“もうこんなわたし、なんで生きてるんだろう”と思って、死を考えたこともあったかもしれません。

それでも朝が来てそこに現実があり、また生きていかなければならなくて、今度は周りに弱みを見せないように強がって、“もっとストイックにならなければ、こんな弱い自分ではダメだ”と、自分の気持ちを抑え込み、何度も何度もそんな心にムチ打つように、今まで自分を責めつけるように頑張ってきたのではありませんか」

瑞枝の目にみるみる涙が溜まっていった。それでも一生懸命泣かないでおこうと毅然とした態度で涙を堪えながらも、溜まった涙は溢れて左右の目じりから頬を伝って落ちていき、さらに鼻筋をも伝って涙がこぼれ落ちていったのだった。

 

するとその横で、今まで明るく振る舞っていた有里が、急に姿勢を崩して嗚咽を漏らしだした。瑞枝は有里に振り向いたが、姿勢は崩さず毅然としたままであった。

 

つづく

次回明日10月7日(月)は、毅然とした態度の瑞枝、

物語メソッド実践編:「きれいな一筋の涙」をお話します。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。 心より感謝いたします☆

 

※この物語の後半は、実話にもとづいたフィクションであり、登場する人物など、実在のものとはいっさい関係がありません。

 

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