物語メソッド実践編:「和尚との心の掛け違い」
◆心の底から自分らしく生きるメソッド(実践編)◆
「光曉和尚の愛と心のセラピー物語」
~私、自分らしく人生を生きます~
§ 和尚との心の掛け違い
前回、瑞枝は有里に抱き付かれるように号泣され、傍観的になっていた自分を有里の気持ちに寄り添うことで、瑞枝は何かを感じたのか目からは一筋の涙が流れ、それはいくつもの筋となって流れ落ちていったのだった。
和尚は瑞枝を見ながら、本人はなにが起こっているのか頭ではかわからないだろうと思った。それは、まるで今まで抑え込んでいた感情という風船が表に飛び出さないように、いくつものロープで固定されていたものが、知らぬ間に一本ずつ紐解かれていっているように思った。
瑞枝にとっては、意識して自分の抑えている感情を表に出すのはタブーだと思っていたので、自分の意識ではわからないところで起こっているこの状態を理解することができないのは当然のことだったが、和尚は瑞枝が有里の気持ちに触れることによって、ようやく本当の自分と向き合える心の準備ができてきたのかなと、思った。
有里は落ち着きを取り戻し、
「瑞枝ちゃん、ごめんね。自分でもよくわからなくて、気がついたら瑞枝ちゃんに抱き付いて泣いてた。いい年をして恥ずかしいね、本当にごめんね」
瑞枝は、首を小さく左右に振って有里を見ていた。
「ハアー、なんか脱力感。久しぶりにこんなに泣いたわ。昔ね、私10年ぐらい前までかな、ほんま泣き虫やったんよ。すぐ傷ついて泣いてた。今でこそこうなったけど」
和尚は、有里の本心からの言葉が、瑞枝の心にも響いているのかいないのか正直わからなかった。
瑞枝はというと、自分が苦しくて辛くて悲しい気持ちを思い出して、思わず涙がこぼれてしまった。同時に、自分が人前で泣いてしまって自己嫌悪になっていた。
「瑞枝ちゃん、ほんまにありがとう」
「いえ、私はなんにもしてないです」
「ううん、受け止めてくれるだけで嬉しかったんよ」
「私は感謝されるようなことは、なんにもしてないです」
和尚は、瑞枝が素直に有里の気持ちを受け取らないことに言った。
「瑞枝さん、人は自分の素直な気持ちを受け取ってもらえないとき、とても悲しくなるんですよ。瑞枝さんの口癖でもある“でも”という言葉は、“相手の気持ちを受入れません”と言っているのと同じなのですよ。
“でも”ということは悪いことではないけれども、まずは“Yes”と受け入れてあげてから、“でも”を言うと、それだけでコミュニケーションが全然違ってくるのですよ。
例えば瑞枝さんが私に、
『これとても便利ですから是非試してみたほうがいいですよ』と言ったときに、
『でも、私はいいです』と言われるのと、
『ありがとう、でも、私はいいです』とか、
『へーそうなんですか、でも、私はいいです』と言われるのと、 どちらが気分いいですか、ということなのです。
言葉は習慣の問題ですから、この“Yes, but”という法則を自分にとって役に立つと思ったら選択し直して、今日から使ってみるようにしはどうですか。気分がいいほうを選択するということは、また一つ自分に幸せになることが増えることですよ。
瑞枝は、和尚に“Yes, but”を使った方がいいと言われて、
『そんなこと言われなくても知ってるし、日頃はそういうふうにしてるし。そうじゃなくて、うーんうまく言えないけど、自分が人の役に立てるような、感謝されるに値しない人間ってわかってるから、私の本心とは裏腹に相手に合す自分が嫌だし、そんな自分の心が醜いし。
そんなことを思ってる私に“嬉しかった”とか“ありがとう”と言われても、“Yes”って相手の気持ちをまず受け入れるなんて、偽善ぽくってそういう気持ちになれるわけがない』と。というより、自己嫌悪になっているところに、そんなことを言われて余計にイラッとしたのだった。
和尚は、瑞枝がそんなことを考えていることなど知るはずもなく、瑞枝は有里の気持ちに触れることによって、自分の感情を少し解放できたのだと思っていた。そして、和尚は話を進めていった。
瑞枝さんはこんな話をすると、“ありがとう”を5つ言う(「それができたら悟ってるわ」参照)ところでも言っていましたが、『頭ではそういうふうにした方がいいと思っていても、気持ちがついてこない。
だからそう思っていてもできない』と思うかもしれません」と言って、和尚は新しい慣れないことに抵抗する心の話をし出した。
「面白いことに、瑞枝さんが『自分は人の役に立てれる、感謝されるに値する人間だ』と心で思えるようになったからといって、思考の言語システムは、習慣としてインプットされているので、心に反して慣れ親しんだ“でも”という表現をまた使ってしまうのです。
例えば、エスカレータで大阪と東京では、エスカレータの乗る立ち位置が左右違いますよね。瑞枝さんが東京へ行って、なにも考えずにエスカレータに乗れば、当然大阪の人は左側に立ちます。
そこで東京では右側に立つことを知って、東京に居る間は右側に立つように意識して習慣付けようとします。でも、またなにも考えずに乗ったときには、今までの大阪で慣れ親しんだ左側に立ってしまうということです。
つまり、思考を変えたからと言って気持ち(心)も変わるわけではなく、また気持ち(心)を変えたからと言っても思考は前のままになっている、というわけです。
この思考と心の不一致みたいなものが、“手間が掛る”感覚になるのかもしれませんね」と言って、和尚は一呼吸入れた。
瑞枝はイラッとした気持ちのまま、
『どうせ人の気持ちなんて所詮わかるわけなし。私はありがとうと言おうとしたら、感謝することが思い浮ばなくて、やっぱり心まで腐ってる最低な人間だから、なんでもいいって言われたけど、そんなことしか出てこない自分が情けないし、出てこないから適当なことを言っている自分が偽善ぽくって嫌になるし、ただ言われていたから言うようにしたけど、そんな気持ちでついてこないから毎日やるのが億劫』
と思っていたものの、そこは顔には出さずに和尚の話を聞いていた。
瑞枝は、どうせ心の内をわかってもらえないもどかしさに、『やっぱり私は・・・無理なんかも』と、落胆する思いだった。
つづく
次回明日10月9日(水)は、
物語メソッド実践編:「わかっているけどできない理由」をお話します。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。 心より感謝いたします☆
※この物語の後半は、実話にもとづいたフィクションであり、登場する人物など、実在のものとはいっさい関係がありません。
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