第四話「彼女の真実」
 

 

 
和尚が言った、「本当のこと話してないだろう。」と言った瞬間、彼女は、

 

「言ってないよ!言ったら泣いてしまうから言わへん!言ったら答えくれるんか!!」と、彼女は初めて怒りという感情を露わに出し、鋭い疑いの眼差しで和尚を睨みつけた。

 

和尚は、彼女からそう言われたので即答で「あげるよ!」と答えた。

 

 
彼女はその言葉を聞いて、
 
「絶対頂戴や!!約束やで!!だったら言うわ!!」と言って、話し出したのだった。

 

 
しかし、和尚は彼女に「あげるよ!」と言った瞬間、相談内容もわからないのに、『なんであげると言ってしまったんだろう。』と、
 
そして『絶対答え頂戴や!』という彼女の言葉に、全身にぞっとするような不安に駆られた。
 
 
 
それはある意味、売り言葉に買い言葉のような感じで、和尚は受け答えをしてしまったのだった。

 

 
 
気がつくと、彼女はもう話始めていた。
 
これから話す彼女の体験は、あまりにも和尚にとって衝撃的だったので、和尚は不安に駆られていたことも忘れて、彼女の話に聞き入っていたのだった。

 

 
 
彼女は、一言ひとこと噛みしめるかのように、次のように話始めた。

 

「私、捨て子なんよ。私な、九州で生まれたようなんやけど、それで小学校入る前に同じ九州で里子に出されてん。
 
小学校までは我慢しておとなしくしとったけど、中学に入ってから荒れだして中学では番はっとった。酒たばこもこの時に覚えたし、セックスもした。

 

 
学校もようさぼっとったから、ほとんど勉強してない。だから中学卒業してからは高校も行ってない
 
卒業後は中学から入ってた暴走族のグループでつるんでて、バイクの後ろに乗って走り回ってた。

 

 
ほんでな、卒業して16の時にな、私、暴走族のリーダーとその他の仲間二人に無理やりまわされてん(輪姦された)。

 

 
避妊なんかするわけないから、それでな私、妊娠してん。

 

私、直感でリーダーの子やとわかったけどな、産みたかったからダメもとでリーダーに言ったけどな、
『何で俺の子やとわかるっとや!』って言われて、その時自分一人で産もうと思ってん。

 

 
ほんでお腹が大きくなってきて、あるとき里子のお母さんにばれてしもた。
 
 
産みたかったから産もうと思ったけど、里子の両親に猛反対されて、無理やり病院連れて行かれた。

 

 
ほんでな、私、無理やり子供をおろされてん。
 
 その時に私な、子供を殺してしまったと思ってん。
 
 産みたかったのに大事な命を奪ってしまってん。

 

 
だから私は人を殺した、人殺しなんや!!
 
 こんな私は生きててもしょうがないんや!!
 
 もうこんな思いして生きててもしょうがないんや!!

 

 
私は人殺しや…、もう生きててもしょうがない。早く死にたい!!」と言って、彼女は、最後の言葉を言い終わると声を上げて号泣したのだった。

 

 

 

和尚は彼女の話を聞き終えると、じっと彼女を見たままだった。

 

というより、和尚は彼女の話を聞いて、ショッキングな話を聞いた時のように心に恐怖の緊張が走っていた。
 
 
そして、彼女の泣き叫ぶ声は、和尚の心にさらに追い打ちを掛けるように恐怖として襲いかかったのだった。

 

 
 
しばらくして彼女の号泣する声が止み、気持ちに落ち着きを取り戻して来たころ、
 
彼女は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔のまま和尚に向かって言った。

 

それは、今の和尚にとって一番聞きたくない恐ろしい言葉だった。

 

 
「言ったで!!答え頂戴や!!早く頂戴や!!」と、彼女は強い口調で和尚を睨みつけながら迫った。

 

 
和尚は体が固まったまま、彼女の話に対する答えなどあるはずもなかった。
 
 
和尚は、何も考えることができず、絶体絶命のピンチに立たされたのだった。

 

つづく。

 

 

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