第五話「奇跡のセラピー①」

 

 

  和尚は、彼女から強い口調で、

 

「言ったで!!答え頂戴や!!早く頂戴や!!」

 と言われたものの、この話を聞いて答えなど浮かぶはずなどなかった。

 

 ただただ彼女の話に引き込まれていた。

 

 

 和尚は、あまりにも衝撃的な話に何も考えられず、自分の中の恐怖で彼女を見つめるだけしかできなかった。

 

和尚は、何も考えることができず、絶体絶命のピンチに立たされたのだった。

 

 

 しばれらくすると、と言っても、和尚の感覚の中ではスローモーションのように時間がゆっくりと過ぎて行く感じがしたのだったが、後で冷静に考えると10秒か15秒ぐらいだったと、そう思えるような時間だった。

 

  突然和尚の頭の中で、ぼんやりと、小さな男の子のイメージが湧いてきた。

 

 

そして和尚は気がつくと、彼女に語りかけていたのだった。

 

和尚は後で振り返った時、意識ははっきりとして覚えているのだが、まるで自分がイタコ(チャネラー)のように誰かに言わされているような、不思議と言葉が自然に浮かんできて、勝手に言葉が口から出て行くと言った感じだった。

 

 

それは、次のように語りかけていたのだった。

 

 「もし、自分の子供が天国から見ていたらこう言うと思うよ。

 

 

 『お母さん、そんなに苦しまないで。

  

  僕は初めからこうなることを知っていたんだ。

  

  初めからわかってお母さんの中にやどったんだ。

 

 

  お母さんのせいじゃないよ。僕がお母さんを選んで来たんだ。

  

  お母さんには辛い思いをさせて本当にごめんね。

 

 

  お母さん、そんなに自分を責めないで。

  

 僕はお母さんにメッセージを伝えたくてこうしたんだ。

 

 

  それはお母さんにしかできないんだ。

 

  それは、お母さんと同じように傷ついている心の痛みを持った多くの人を助けてあげてほしいんだ。

 

 

  同じ心の痛みを持ったお母さんにしかできないんだ。

 

  お母さんにはそれができる力があるんだ。

 

  

  多くの人を助けてあげて。

僕はそれを伝えるためにお母さんを選んで来たんだ。』と。」

 

 

和尚はそう話し終えて彼女を見ると、彼女は大声を上げて、心の底から何かを吐き出すかのように鼻水も気にせず号泣し続けていたのだった。

 

 

和尚は、なぜかこの時、なんとも表現しがたい“ただある”“無”とでも言うべき心静かな状態の中で、彼女をただただ見ていたのだった。

 

 

しばらくして、和尚は、意識が現実に戻って行くような感じになって行き、彼女も落ち着きを取り戻したところで、和尚は彼女に恐る恐る聞いてみた。

 

 

「周りに同じような人がいるの?」と。

 

 

すると、彼女は、

「いっぱいいてる。」と答え、和尚は内心びっくりした。

 

 

そして彼女は、

 

「は~、すっきりした!!やっと楽になれたわ!!」

 

 

と言ってテッシュで鼻をかむと、本当に精気を取り戻したかのような生き生きとしたすっきりした顔をしていたのだった。

 

 

つづく。

 

 

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