-エピローグ‐

 

 
 
 
彼女がお寺に来てから六日後に、彼女から和尚のところに電話があった。

 

 
 
 
電話口で開口一番に、
「聞いてびっくりするで。」と言って、話し方は相変わらずだなと可笑しくなった。

 

 

 
 
 
「会員制の高級クラブで働くことになってん。すごいやろ~。三日前に前から知ってたオーナーから直接言われて、明日からいくねん。」と、嬉しそうに話した。

 

 
 
 
「ほんでな、彼氏もできてん。いいことづくめやわ。ほんまに言ったとおりになったわ。」と、幸せいっぱいに話してくれたのだった。

 

 
 
 
 
その数日後に、陽子の夫である彼から和尚のところに電話があった。

 

 

「和尚さん、彼女和尚さんのところに行ったんですね。この前、新しいお店に呼ばれて行ったら、見違えるほど別人のように変わっててびっくりしましたよ。彼女何も話してくれないんですけど、何があったんですか?」

 

 
 
「それは守秘義務なので言えませんよ。」と言って、和尚は彼女が元気になってよかったことを彼に言ったのだった。

 

 
 
 
そして、和尚は彼に、

 

「他の女性のことを世話するのもいいけど、陽子ちゃんや息子さんの世話もしっかりやってくださいよ。」と、笑いながらも釘を刺したのだった。

 

 
 
 
 
和尚は、妻が入れてくれたお茶を飲んでいると、

 

 
「お父さん、私の世話もしっかりお願いしますよ。」と、

 

 
電話の会話を聞いていたのか妻に釘を刺された格好になり、和尚は飲んでいたお茶を吹きそうになりながら妻の顔を見て、思わず苦笑いをしたのだった。

 

 
 
 
 
和尚は、彼女との不思議な体験を思い出しながら思った。

 

 
 
 
人はみな、どんな人でも愛される価値があり、生きている価値があるのだと。

 

 
 
なぜなら、人は生きている中で、何かしらの心の痛みや傷を持って生きていて、その自分の痛みや心の傷という体験が、同じ痛みで悩み苦しんでいる人を救うことができるのだから。

 

 
 
それだけで人は、生きていて愛されるに値すると。

 

 
 
 
 
そして、何よりも、自分自身を肯定し認めてあげるということ(理解して自分自身をゆるしてあげること)が、自分自身を愛することにつながることの大切さを、和尚は彼女から強く学んだ気がしたのだった。

 

 
 
 
おしまい★

 

 
 
ご愛読戴きありがとうございました♪

 

 

 

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