第五話「奇跡のセラピー②」

 

 彼女は、今までに何度も死のうとしたことがあったそうだ。その度に彼女は、誰かに引き止められるかのように助けられた話をした。

 

ある時には、彼女は生後間もない赤ちゃんがいる友達のマンションに遊びに行った。友達が赤ちゃんのためにどうしても下のコンビニで買い物をしなければならなくなり、その間寝ているので大丈夫だから一応赤ちゃんを見ていてほしいと言って外出した。

 

彼女は赤ちゃんをじっと見ていたら、自分の過去を思い出して居たたまれなくなってきた。そして、彼女は辛さの余りマンションのベランダから飛び降りて、本気で死のうと強い衝動に駆られたことがあった。

 

いざ彼女がベランダに行って死のうとした時、急に赤ちゃんが泣きだした。それがあまりにも尋常じゃない泣き方だったので、彼女は気を引き止められた。

彼女は『何で泣くねん』と思いながらも、仕方なく赤ちゃんが寝ているベットに行き様子を見ていると、友達が財布を忘れて帰ってきたことがあったと、和尚に話したのだった。

 

 

和尚はその話を聞いて、何の根拠もなかったけれども彼女に聞いてみた。

「明日香ちゃんは、霊感が強くない?」

 

すると、彼女は「うん。」と答え、小さい時から霊感が強くて、彼女自身もそのことと何か関係がありそうだと言った。

 

和尚は、これまた何の根拠もなかったのだが、話の中で直感的に、

「何かこれからいいことがたくさん起こる予感がするよ。」と、何かとても確信めいたものがあって、彼女に言ったのだった。

 

彼女はその言葉を聞いて、「うん、信じるわ。」と笑顔で応えたのだった。

 

和尚は、彼女の『信じるわ。』という言葉を聞いて、心の中で驚いた。

 

和尚は、彼女の中で何か大きな意識の変革が起こって気持ちが吹っ切れたことを肌で感じたのだった。

 

 

彼女は、本当にかわいい笑顔で和尚にお礼を何度も言った。それは誰が見てもとても素直な女の子でしかなかった。

 

和尚も何か奇跡が起こったような不思議な体験に、何か大きなエネルギーをもらった気がしたので、彼女に自分自身も癒されて本当に生きる活力をもらったと、お礼を述べた。

 

彼女は照れながら、

「私は何にもしてないやんか。私がしてもらったんやから。」と言って笑ったのだった。

 

つづく。

 

 

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