「与えたいことがやりたこと」
『§まっすぐに生きるのが一番』
「第48話:与えたいことがやりたいこと」
哲也が意図しないまま「殺し文句」を言った瞬間から、哲也と優花はお互いを認め合った唯一の存在として、恋人同士の関係になった二人の物語。
前回哲也と優花は、公民館で話すおばあちゃんの話を聞き入っていた。話が終り、質問の時間が設けられた。
一人のお母さんが手を挙げた。
「とてもためになるお話を聞かせていただき、ありがとうございました。できることからやっていきたいと思っています。
質問は、私ではなく一緒に来ている娘の就職のことなんですが」
「お母さんやめてよ!私はちゃんと就活してるんだから、もう勝手なことやめてよ!」
「なに言ってるの、やりたいことがわからないって毎日愚痴を言って。お母さんも心配になるでしょう。なにかヒントがいただけるかもしれないじゃないの」
「お嬢さんは今、就職活動中なんですか。ということは大学生ですかね。やりたいことね、この言葉は大学生だけじゃなくて、大人からもよく聞く言葉ですよね。
お嬢さんは、やりたいことがわからないということですかね」
「まあ、そうなんですが。2月ぐらいから就職活動をして、50社以上の会社にエントリーしたり、説明会に参加したり、面接も何社か受けたのですが」
「この子ね、面接を受けたりしてるんですが、やりたいことじゃないから面接行かないって言って、勝手に面接断ったりしてるんです」
「だって、行きたくもない会社で働いても、すぐに辞めたら意味ないでしょう」
「先生、娘はいつもこうなんです。先生、どうすればいいでしょうか」
「やりたいことね。私はみんなやりたいことはあると思っているんです。
そうですね。例えばここに100万円あると思ってください。自由に好きな物を買ってもいいですし、好きに使ってくださいと言われたら、なにに使いますか。なんでもいいですよ」
「カバンとかでもいいですか?」
「ええ、なんでも使っていいですよ」
「じゃカバン、ブランドのカバンがほしいです」
「他には?」
「えーっと、洋服とか」
「他には?どこかへ行ったりとか」
「アメリカのディズニーワールドへ行きたいです」
「ブランドのカバン、洋服、旅行ですね。このほしいことを違う見方をしたら、なんと言うかわかりますか?」
「違う言い方ですか・・・」
「『やりたいこと』ですよね」
「あっ、そうですね」
「カバンを買いたい、洋服を買いたい、アメリカのディズニーワールドに行きたい、みんなあなたがやってみたいこと、『やりたいこと』ですよね。
ですから、みんなやりたいことはあると思うのです。
ところで、就職活動でやりたいことがわからないと言うことでしたね。
ちょっと見方を変えてほしいと思うのです。
“カバンを買いたい、洋服を買いたい、アメリカのディズニーワールドに行きたい”と言ってくれましたが、カバンがほしいのですか。洋服がほしいのですか。アメリカのディズニーワールドに行けたらいいのですか。
私たちが本当にほしいものは、それですか?
私たちが本当にほしいものは、物そのものではなく、その物を通して楽しくなったり、嬉しくなったり、わくわくすることではないでしょうか。
社会に出て働くと言うのは、会社の仕事を通して、お客様が楽しくなったり、嬉しくなったり、わくわくしたりすること。
時には感謝されたり、笑顔になったり、そんな人のために役立つことを、『与える』ことだと思うのです。
働くと言うことは、『人』のために『動く』こと。
人のために動くとは、人に『与える』こと。
『与える』というのは、奉仕すること。
英語では、奉仕のことをサービスと言いますよね。
社会で働くとは、自分の労力を奉仕した対価として給料をもらうことなのかもしれません。
会社が、あなたを楽しくさせたり、嬉しくさせたり、わくわくさせることは、もちろん大切ですが、それよりも自分自身が、人にどんな楽しいことや喜んでもらえることを提供できるか、その考え方を持つことが大切だと思うのです。
その考え方の結果が成果となり会社も潤い、会社も仕事も楽しくなると思うのです。
私たちは、会社、仕事、人が、私たちを幸せにするものだと思いがちになります。
ですから、会社や仕事に『やりがい』を求め、人に『生きがい』を求めるのです。
『やりがい』や『生きがい』は、その人そのものが創り出すものなのです。
さて、お嬢さんは、人のためにどんなことを『与えたい』ですか。
その自分が『与えたい』と思える会社は、仕事はなんでしょうか。
その視点で、発想で会社を見れば、あなたの心を引き寄せる会社は必ず見つかります。
ひょっとしたら、その会社は、このマイクを作っている会社かもしれません。このマイクに使われている部品を作っている会社かもしれません。
そして、一つの答えがあるとすれば、人のために世の中のためにどんなことを『与えたいか』と真剣に考えている会社を知ることが、あなたが働く会社かもしれませんね。
それが、あなたが求めている『世の中のために社会に貢献したい』と思っている、あなたが探し求めていた『やりがい』なのではないでしょうか。
そこまで心の中で思っていたから、やりたいことじゃないからと面接を断ったのだと思います。普通は面接を最後まで受けますからね。ある意味チャレンジャーですね。
それができるということは、それだけ強い意思をあなたの心の中に持っていたということです。ただそれを、頭(意識)で言語化できなかっただけだったのだと思います。
最後に、私たちは多く『ちょうだいちょうだい、幸せにしてちょうだい』と思いがちです。
けれども、本当の幸せとは『与えて与えて、見返りを求めない無条件の奉仕』にあるのかもしれません。
でも、与えて与えて、相手の反応や評価が気になるのが人間であり、その葛藤に打勝って相手の幸せや価値に焦点をあてていけることが、日々人生の勉強なのかもしれませんね」
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
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