『§まっすぐに生きるのが一番』
「第76話:“自分らしくなる”必要はない」

 

 

哲也が意図しないまま「殺し文句」を言った瞬間から、哲也と優花はお互いを認め合った唯一の存在として、恋人同士の関係になった二人の物語。

 

 

前回、哲也は優花とドライブ中『たべて うごいて よくねむって 自分らしく』の看板を見つけて、その言葉に引きつけられた。

 

 

優花は、そのあとに哲也が現代社会になぞらえて言った「よく食べて、動かず、寝不足じゃん。」という言葉に、そもそも自分らしさをつくるリズムというか、人が活動的になる原動力が欠けているような気がしたのだった。

 

 

 

「この言葉ってさ、小学生が書いたんじゃなくて、」

 

 

「哲也さ、思うんだけど」

 

 

「うん、なに?」
哲也は声のトーンが下がって言う優花の言葉に、自分の話しを止めた。

 

 

「“自分らしさ”ってさ、まず自分の生活リズムというか。

 

 

『よく食べて、活動的で、よく寝むれる』ってことが、
なにかをする上でも大事な気がするんだよね。

 

 

それが、“自分らしい生き方”をつくっていく気がするんだよね。

 

 

あっ、おばあちゃんがこんなこと言ってた。

 

 

『自分の使命』を記した紙を持って生まれてきた人はいないって。

 

 

『この世で成し遂げたいリスト』の紙を握りしめて生まれてきた人もいないって。

 

 

でも、生まれてきた人それぞれの心の中には、
『自分の希望や夢を導く何かが潜んでいる』んだって。

 

 

だから、『自分を嫌な気持ちにしている状況』があったら、それは自分の考えを見直す機会なんだって。

 

 

よく言う『自分と向き合う』ってやつだよね。

 

 

こうも言ってたかな。

 

 

『そんな自分を嫌な気持ちにしている状況を緩和するために、対策を講じること』

 

 

自分のリズムを取り戻すってことだよね。

 

 

そして、
『自分の嫌な気持ちにしている状況を変える時に、

 

 

その場しのぎの解決策に頼るのではなくて、
長い長期的な目標をみて解決策を考えるようにすること』なんだって。

 

 

哲也おばあちゃんの言ってることわかる?」

 

 

「わかる気がする。

 

 

人は心に自分の希望や夢を導くなにかを持っていて、それを邪魔するような自分の嫌な気持ちにしている状況があったら、

 

 

今の自分の嫌な気持ちにのみ焦点を当てるのではなく、
自分を嫌な気持ちにしている状況全体をみて、
長期的にもどうすれば改善できるか目標を立てる。

 

 

つまり、自分が楽しく生きられるかを考えることだと思う。

 

 

そうか、どうしても人は今の気持ちをなんとかしたくなる。

 

 

その場しのぎの解決策に頼っていると、
結局は今が改善されただけで何も変わっていないんだ。

 

 

今の世の中って、日々時間に追われ、せかされて生きている感じがして、

 

 

『食べて、動かず、寝不足』も続くと、人は疲労感を覚え、ストレスも溜まってきて当然だし、誰だって今のこの状況をなんとかしたくなる。

 

 

『たべて うごいて よくねむって 自分らしく』

 

 

まずは、健康で活動的な自分をつくること。

 

 

それが“自分らしさ”をつくる。

 

 

そうすると、心に余裕が生まれてくる。

 

 

この心の余裕が、今だけでなく、先の自分を考える気持ちにもなれる。

 

 

そして、自分が楽しく生きられる自分の希望や夢について考えること、

 

 

これこそが“自分らしい生き方”をつくることになるんだよ」

 

 

 

『自分らしい生き方を実現していく』

 

 

この言葉は文部科学省が「中学校のキャリア教育の手引き」の中でも言っている。

 

 

多く私たち大人もまた、『なにか自分のやりたいことを見つけて生きなければ』と、そんなふうに思い、もんもんとして生きているのかもしれない。

 

 

そして、周りの状況に影響されて、やりたいことは何なのかと不安に駆られて正解を求め、その方法論に捉われすぎているのかもしれない。

 

 

“自分らしい生き方をつくる”問い掛けがあるとすれば、

 

 

『気持ちに余裕のある健康で活動的な自分だろうか?』

 

 

『今の自分の嫌な気持ちだけを解消しようとするのではなく、自分を嫌な気持ちにしている状況を改善する策を考えているだろうか?』

 

 

『自分が楽しく生きられる自分の希望や夢について、考える時間をつくっているだろうか?』

 

 

この3つのサイクル(現状⇒問題・解決⇒ビジョン)を常に考えながら一歩一歩前に歩いていくことで、自分の中に潜んでいる自分を導く希望や夢が、

 

 

“ひらめき”や“気づき”、“人からの誘い(奇跡的な偶然)”と言った、引き寄せの法則のような形でやってくることかもしれない。

 

 

そう考えると“自分らしくなる必要も自分らしく生きる必要もなく”
答えはシンプルで、

 

 

“ただ自分の人生を生きるだけ”  のことなのかもしれない。

 

 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。
 

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