Ⅰ.日陰①

 

女の子は、小さいころから足を引きずって歩いていた。それは同級生から格好のいじめの対象となった。

 

女の子は、そのことで何度も何度も泣いた。その度に母が彼女を慰めてくれた。その反面、彼女はそのことで何度も何度も母をなじった。

 

 

ある時女の子は、母が自分の足のせいで辛そうにして、自分の足を不憫に思い泣いていることを知ったので、彼女は、泣くことも母をなじることも止めた。

 

女の子は学校へ行くことが嫌で、何度も何度も母にグジッていたこともあったが、それ以来どんなに辛くとも学校へは行った。

学校に行っても、親友と呼べる友達もいなかった。

 

気にかけてくれる同級生の女子もいたが、自分がいじめの対象になっていたので、それ以上の関わりは持ってこなかった。

学校の先生の中には気遣って声を掛けてくれる先生もいたが、担任を含め多くの先生がその場しのぎの注意をするだけで、何のいじめの解決にもならなかった。

 

 

彼女は一人ぼっちだった。それが嫌だとは思わなかった。なぜなら、小さな子供ながらに母子家庭で母が自分のために一生懸命働いていることを知っていたから、ずっと一人には慣れていた。

しかし、彼女は、小さいながらに自分の足を呪った。「なぜ私だけこんな風に生まれて来たのか。」と。

 

 

女の子がそれを強く思ったのは、中学3年生の思春期の頃だった。彼女は人並みに初恋をした。クラスの男子を好きになった。

 
彼は、彼女のことを直接いじめたことは、これまで一度もなかった。彼は小学生の頃から、自分がいじめられている時にいつも『助けらなくてごめん』と、優しい目を自分にしてくれていたことを知っていた。

そんな彼が中学3年生の時に、一度だけいじめっ子たちに「もう止めとけ!」と言ってくれたことがあった。最初何が起こったのかわからなかった。でも、初めて嬉しい気持ちになった。

それが女の子にとって初めての恋になったのだった。

 

 

つづく

 

 

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