Ⅳ.転落①

 

 彼女は、入院中に次の仕事のことをあれこれと考えていた。出た結論は、昼間の仕事は地味で向いておらず、しかも今の一人暮らしの生活を続けるには、ある程度の収入が必要というものだった。

 

退院した後、彼女は夜の仕事へと戻って行った。しかし、北新地のような華やかな世界はもう無理で、彼女はキャバクラで働きだした。そのキャバクラの中でも、スポーツ選手や芸能人もよく来ると言われている人気店を選んだ。

 

北新地で働いていただけあって、彼女の身の振る舞いは可憐で、他の人気ある女性が霞んでしまうぐらい魅力ある雰囲気を醸し出していた。

 

彼女がお店で1番の指名を受ける、ナンバー1になるにはそう時間は掛らなかった。

 

 

彼女には、自然と年齢の高い男性やお金に余裕のある男性が多く指名した。若い男性にとっては、彼女には何か目に見えない敷居の高さを感じるのか、指名する人はほとんどいなかった。

 

彼女は、ここでも同伴アフターと忙しかった。彼女は働くときに決めていたことがあった。それは、『ここでは、もう簡単に女をゆるすようなことはやめよう。』と、固く決めていた。『これからは、結婚を考えた男性にだけ心をゆるそう。』と決めていた。

 

しかし、何度も指名をされ、同伴アフターを重ねていくと気心も知れて行き、結婚の対象外の男性から色恋になる誘いを断るのも至難の業になってきた。

 

けれども、彼女はそんな時に、相手に嫌な思いをさせないように上手くかわした。それができるのも知らず知らずのうちに、自分の身を守るすべが備わっていたのだった。

 

 

ある時彼女は、たまに来る誠実な男性に恋心を持った。彼女は、結婚相手に相応しいかどうか、話の中で男性の身辺情報を聞き出して行くうちに、この人なら結婚を視野に入れたお付き合いをしてもいいと思った。

 

彼女は、久しぶりの恋に心が躍った。彼女は、その男性と頻繁にメールや電話で話す仲になって行き、ますます彼の性格や価値観に魅かれて行った。

 

ついに、その思いが実を結んで、その男性とデートができることになった。彼女は喜び勇んで、彼とのデートの日を待ち望んだのだった。

 

 

次回転落②へつづく。

 

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