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◆心の底から自分らしく生きるメソッド(実践編)◆

「光曉和尚の愛と心のセラピー物語」

~私、自分らしく人生を生きます~

 

§ もう、私はいいです

 

 

前回、瑞枝が他のモニター二人と一緒に和尚の話を聞き、和尚からこのメソッドへの参加の同意を求められたとき、瑞枝が沈黙したわけがあった。そして、和尚は瑞枝の性格からして、このようのなるのを予想していたのだった。

 

和尚は瑞枝の気持ちがわかり、黙っている姿を温かい気持ちで見ていた。他のモニターの二人は、和尚と瑞枝を交互に見ていた。

 

和尚は、その二人のモニターの視線をわざと無視して、この場を傍観するようにこの二人が、仲間としてやっていくこの二人が、瑞枝にどう接するのかを見守った。

 

瑞枝以外の二人のモニターの一人は、有里といって瑞枝より3つ年上の31歳の女性だった。有里は、瑞枝とは正反対の性格で、明るくて積極的で社交性があり、女性特有の母性的な柔らかさを持った落ち着きを感じさせる女性だった。

 

もう一人は33歳の男性で、名前はと言った。彼も有里と似てソフトなイメージを感じさせ、真面目さの中に感受性豊かな柔軟さを持った人との交流が好きそうな好奇心の強い男性だった。

 

和尚もどちらかというと有里や誠とよく似た性格だった。和尚はこのメソッドのモニターをお願いしようとしたときに、全員が自分と似た気の合う人の顔が思い浮かんだのだが、両極性のバランスを考えたときに、対極となる存在が欠かせないと強く思った。

 

そして必然にも、瑞枝が友達の紹介でこのお寺にやって来て、和尚に気づきというギフト(贈り物)をもたらし、和尚は瑞枝にモニターへの参加を懇願したのだった。

 

 

この沈黙を破ったのは有里だった。

有里は和尚の空気を察したのか、瑞枝に話しかけた。

 

「どうしたん、具合でも悪いのん?大丈夫?」

「・・・・・・」

「しんどかったら、無理せん方がいいで」

「・・・・・・」

有里は瑞枝がなにも言わないので、和尚に助けを求めるような目をした。

 

和尚は、瑞枝の沈黙が長く続いたので、助け舟を出した。

「この三人は、これから一緒にやっていく仲間です。仲間が困っているとき、どうしますか」と。

 

すると、有里が瑞枝の側に動いた。そして背中を撫でだして瑞枝の具合を心配した。それを見ていた誠も瑞枝の側に寄り「大丈夫?」といいながら、どうしていいのかわからないような不安な顔をしていた。

 

その情況がしばらく続いた。

 

そして瑞枝が言葉を発した。 「もう、私いいです」

 

瑞枝は有里と誠に「ありがとうございます」とお礼を言って、立ち上がった。

 

有里と誠は、なにが起こったのか理解できないように瑞枝を見ていた。

 

 

「和尚さん、私はもういいです。帰ります。私のような人間は、このような場にはふさわしくないです。ありがとうございます」

「どうしたん、どないしたん、ようわからんけど、なにがふさわしくないのん?」

「ごめんなさい。私は、みなさんのような立派な人間ではないですから」

「なにが立派なん?私なんか立派ちゃうよ。私、ほんまあほやし、びびりやし、あたま悪いし、なんの取柄もないし」

瑞枝は、有里の言葉を偽善ぽく気休めだと思って聞いていた。そして、帰ろうと動こうとしたとき、有里が瑞枝の腕を掴んで言った。

 

「なにがふさわしくないのん?そんなんいうたら私かってふさわしくないわ。立派なんかじゃ全然ないし、毎日これから自分がどうやって生きていったらいいかわからへんし、なんのために生きているんかもわかれへんし。

そんなとき和尚さんが声かけてくれて、話し聞いてたら、なんか生きるきっかけ見つかるかもわかれへんって思って。和尚さんの話聞いてたら、なんかすごい人になるような感じがしたけど、私はそんなこと望んでへんねん。

普通に幸せになれたらいいねん。普通でいいねん」

 

「有里さんなら、私なんかよりも絶対に幸せになれますよ。きれいし、かわいいですし」

「きれいくないよ、全然かわいくなんかないわ。自分に魅力ないし、中身はおっさんやし。ほんまにつくづく自分はあほやなって、なんかそう思う自分がほんまいややねん」

「私なんかもっともっとあほです。和尚さんのさっきの話聞いてても、あほやからほとんど難しくてわからなかったし。私、ほんまにあほで最悪最低な人間ですから。ほんとに救いようがない人間なんです。もうこんな自分が醜くくって腐ってて大嫌いなんです!」

「みんなそんな部分上手に隠してて、表に出さへんから知らんだけで、みんななんか持ってて、そんなん思うん瑞枝ちゃんだけちゃうと思うで」

 

「ほんまにこんな最低最悪な人間いませんよ。マイナス思考やし、疑い深いし人のことなんか本気で一度も信じたことないですし」

「みんな本気で人のことって信じてるんかな。そう自分に思わして、ほんまはいい人ぶって合わせてるだけかもしれんし。私もそのへんのことは、言われたら自分でもようわからんけど・・・。

瑞枝ちゃんって和尚さんのこと信じてるん?」

 

「えっ・・・」

「私、信じてるって思ってここへ来てるわけじゃないと思うねんな。信じてるって言われたら、オカルトみたいなことじゃないやろうとぐらいにしか思ってへんし。ほんまは、ただきっかけがほしいから来てるだけやねん。普通に幸せになりたいねん」

「私も普通の幸せでいいんです。普通に幸せになりたいんです」

「そうやろ、普通でいいやんな」

 

「普通でいいのにそんな普通にもなれなくて」

「瑞枝ちゃん、私はけっこう能天気なところあるけど、瑞枝ちゃんってなんか聞いてたら、いろんなこと真面目に考えすぎてるんちゃうんかな。『これはこういうものやから、こうしなあかんねん』って、強く思いすぎてるんちゃうんかな。

私思うねん。ほんまにあかんかったら帰ったらいいし、私もあかんなって思ったら帰るし。でもせっかく知り合ってんから、まだはじまったばっかりやし、もうちょっとだけ一緒にがんばってみいひん(がんばってみない)」

 

「私、ほんまになんにもないですよ。ほんまになんにもできないし、足でまといになるだけですよ」

「いいやん、足でまといになっても。私は困れへんし、私も足でまといになるかもしれへんし。そのときは和尚さんを困らせたらいいねん。そのために私らを呼んだんやから。なんか、私って自己中で嫌な女やな。そう思うやろう」

 

「私なんかより全然ましですよ」

「それはどうかな~、私のことをどれぐらい知ってるのかな~」

「有里さんは、私よりは絶対ましですよ」

「ほんとうにそうかな~、私のなにを根拠にそういってるのかな~。それより“まし”っていったな~、こんなときはうそでも“そんなことないですよ”っていうんじゃないのかな~」

有里はそういって、不敵な笑いを瑞枝に向けたのだった。

 

瑞枝は有里の不敵な笑いから来り出される言葉に、なぜか怖いものを感じたのだった。

 

つづく

次回、明日10月3日(木)は、有里と瑞枝の白熱トーク、

物語メソッド実践編:「それができたら悟ってるわ」をお話します。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。 心より感謝いたします☆

 

※この物語の後半は、実話にもとづいたフィクションであり、登場する人物など、実在のものとはいっさい関係がありません。

 

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