「男性不信を乗り越えて」-心のセラピー③④ー
心のセラピー③
和尚は、彼女に諭すように言った。
『ここであなたに気づいてほしいことがあります。あなたの恋愛経験の中で、男に騙されたり裏切られたりしてきました。それがお父さんとの関係に原因があると言ったら信じてくれますか。』
『えっ!お父さんにですか!』
『そうです。あなたはお父さんに嫌われていると言いました。子供はどんな時もお父さんもお母さんも大好きです。でも、多くの子供はお父さんやお母さんに嫌われていると思った時、それが自分のせいだと思います。
そしてあなたもお父さんに思いましたよね。“自分の足が悪いから。だから愛されないのだと”。それでも子供ながらに、お父さんに嫌われないように、お父さんに気に入られるように、いい子にしていませんでしたか。』
『そうだったかもしれません。』
『その時あなたは子供ながらに、お父さんに男性に気を遣うことを無意識に覚えたのです。そして、お父さんとお母さんが離婚し、見捨てられたと思った感情も合わさりました。
高校を卒業してからの恋愛で、あなたは男性に一生懸命に尽くしました。一生懸命尽くすことはいいことです。でも、あなたの心の無意識では、好きな男性から見捨てられないように、一生懸命に彼に尽くしていたのではないですか。そして、自分の我慢を“信頼している”という言葉に置き換えて、頑張っていませんでしたか。
今あなたに求められているのは、何かわかりますか。“お父さんへの理解”です。
あなたは、幼い頃思いました。私の足のせいでお父さんが嫌ったと。でも、真実は違います。お父さんは、“自分の不注意で愛する子供にとんでもないケガをさせてしまった”と。それも女の子に。
お父さんが、自分をどれほど責めていたかわかりますか。あなたを見る度に、あなたが足のことで泣く度に、どれほど自分を責めていたかわかりますか。
それでお父さんは、自分の気持ちを抑えきれずに、お母さんと激しく喧嘩するようになったのではないですか。そして、自分の苦しみから逃れるために外に救いを求め、家を去っていったのではないですか。
今、お父さんに、あなたの足のことに罪悪感を感じないでください。そこにつながらないでください。
真実は、すべて“誤解”から始まったのです。真実につながってください。
今あなたにできることは、この誤解から始まった、心の戦争に終止符を打つことです。
今あなたは、すべてを理解できる大人になりました。だからこそ、この心の戦争に終止符を打つことができるのです。
あなたは、お父さんのことに恨みつらみを持っていたかもしれません。小さい頃にあなたが、今のようにお父さんのことを理解するのは不可能です。苦しく辛い思いをしてきたけれども、今あなたにやってもらいたいこと。
それは、今、お父さんを“ゆるして”あげてくれますか。誰も悪くなかったことを理解して、お父さんを罰するのを止めてお父さんを無実にしてあげてくれますか。』
和尚は、彼女の今までの苦しみに涙目になって、彼女にそう言ったのだった。
心のセラピー④
和尚は、続けて言った。
『そして、あなた自身をもゆるしてあげてくれますか。あなたは、自分の足のことを本当にいつも“こんな足でさえなければ…。”と言って、自分を罰して来ましたね。時には、自分の足を呪うように自分の足を殴りつけたこともあったのではないですか。
その足のことでの怒りや苦しみは、あまりにも辛く、こう思いませんでしたか。
“私はだれからも愛されるはずはない。”と。
長年思い続けて来たその辛い思いは、足が治ったからと言ってすぐには消えませんでした。それはあまりにも辛い体験だったので、あなたはそのことを心の奥深くに仕舞い込みました。そして、あなたの無意識の行動の中で“私はだれからも愛されるはずはない。”と言う思いと、父が母や自分を裏切り見捨てたという感情が相まって、あなたのその感情を強固にしてきたのです。
今、あなたにやってもらいたいことは“ゆるし”です。すべてのことを理解することによって、お父さんを、そして、あなた自身をゆるしてあげてくれますか。
あなたは、もう自分のことを罰し、自分を責める必要はないのです!!
今日、私は、あなたに宣言します。“あなたは無実です!!”』と。
彼女は、今までせき止められていた何かを解放するかのように、声を出して泣いた。今まで心の奥底に溜まっていた膿を出すかのように、体全体を震わせて号泣した。
それを見ていた光曉和尚も、涙を堪えながら彼女が今まで背負っていた、苦しみや悲しみを感じていた。
彼女の顔は、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていたが、感情を出し切ったのかとても晴れやかな顔をしていた。
そんな姿を和尚に見られていることに気づいた彼女は、恥ずかし気ににっこりと笑ったのだった。
和尚は優しい笑顔で言った。
『今なら理解できるよね。今までのあなたとの男性の関係が。見捨てらないために、裏切られないために一生懸命に尽くすことを。そして、見捨てられても、裏切られても自分が傷つかない、恋が実らない相手を無意識のうちに選んでいたことも。それは、自分は愛されない存在だと思い、どれだけ自分自身を罰してきたか、ということも。』
彼女は、納得したように笑顔で頷いたのだった。
『さてと、幸せになるためにさらにもう一つ、お話をしておこうかな。』と言って、和尚は彼女の反応を見たのだった。
彼女は、『ハイ。幸せになるために話を聞きます。』と言って、和尚に向き合った。
『素敵な男性が現れるように、出会った時にもう苦しまずに幸せになるように、さらにもう一つ話をしましょう。』と言って、和尚は話を続けたのだった。
次回は、
最終話「心のセラピー⑤」
そして続けて「エピローグ」へつづく。
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