第2話「一人暮らし」

 

 昼と夜の掛け持ちをしてから4か月が経った頃、ようやく一人暮らしをするお金にも余裕が出て来て、一人暮らしをするために引っ越しをしたのだった。

 

尚美は、生まれて初めての一人暮らしだった。これでお姉ちゃんにも迷惑を掛けずに済むと思ったものの、いざ一人暮らしをするとこんなに寂しいものかと、初めて孤独を味わった。

そんな孤独も時間が経つにつれて、次第に慣れて来た。しかし、今までは一人暮らしをするために頑張って来たけれども、一人暮らしをするようになってから、生活に張り合いがなくなりだしていた。

昼と夜の掛け持ちは、若いとはいえ、朝から夜まで立ちっぱなし続きの仕事は、さすがに疲れが溜まって来た。

特に昼間のパチンコ屋での仕事は、拘束時間も長く思った以上にハードで、足腰への負担も大きかった。しかも、社員の休みを優先するので、アルバイトへの勤務負担が増えて、予定のシフト通りに休めずに不定期な休みになりがちで、それが大きな負担となっていた。

 

そんな頃に、居酒屋で働いていた友達から、夜のお店で一緒に働かないかと誘われた。

尚美は、昼の仕事の負担と夜の居酒屋の仕事もマンネリ化しだしていたので、とりあえず一日体験できるからと言う友達の誘いに興味もあって、一緒に行くことにしたのだった。

尚美は、初めての夜の世界に緊張と不安な面持ちだったが、初日からお客さんから指名が入る好スタートを切ったのだった。

尚美は性格も明るく、備わった気配りも上手で、そんな彼女を贔屓にするファンがすぐに付いた。

彼女は、着飾った自分に女性としての楽しさを知り、夜の華やかな世界をすっかり気に入り、自分の居場所を見つけたかのように働くことが楽しくて、昼と居酒屋のアルバイトも辞めてこの店だけで働くようになったのだった。

彼女は、お客さんにもかわいがられ、お店で働く女の子とも仲良くやりながら、時間と共にお店での人気も高くなり、気がつけばお店の人気ナンバー2になっていたのだった。

そんなある日、母から一本の電話があったのだった。

 

 つづく。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です