『ありがとうの効果と秘訣』 (ありがとうの達人のなり方)

 

 

母の病気による介護疲れを、「ありがとう」のアファメーション
の手法で打破した私は、まず自分が平穏でいられることが
増えました。

 

 [前回は、介護疲れからの打破(私のありがとう体験談Ⅱ)]
そして、母も父も大きな問題もなくいい感じで日々が過ぎ
ていきました。

 

しかし、そのいい流れは、私に怖れを抱かせる母とガチンコ
で向き合わなければならない情況をつくったのでした。

 

 

 

ある日、母が入居する介護老人保健施設の主任さんから、
私にとっては、とんでもない依頼があったのです。

 

 

それは、来週の日曜日に母の誕生日会をするので、
そのときに母に手紙を読んでほしいと言われたのです。

 

 

私は、子供の頃からずっと母との関係がよくなかったこと
もあり、手紙のことを聞いた瞬間、体が強張るような怖れ
を感じました。

 

 

これは、私の照れや恥ずかしさではなく、
『言えない、したくない、それだけは勘弁してほしい』
という思いで、主任さんからの依頼を断りました。

 

 

しかし、主任さんの意志は固く言葉巧みに私に説得を図り、
そんなやり取りをしていると、ふと私の中で心の勉強もして
きたこともあって、

 

『これが母との和解のタイミング?』

 

と心によぎると、もう強く拒める理由がなくなってしまった
のでした。

 

 

結果的に直接読むのは勘弁してもらい、当日主任さんが
代読する形で承諾したのでした。

 

 

 

私のそれからの一週間は、承諾したものの気持ちは『書け
ない』、そんな心が晴れない悶々とした日々が続きました。

 

 

そんなときの一週間は本当に早い!気がつけば、明日が
その日になっていました。

 

 

夜な夜な机に向かい、便箋に書き始めました。

 

 

『お母さん、お誕生日おめでとうございます。68回目のお
誕生日を迎えられたことを、心よりお喜び申し上げます。』

 

 

私は、いろんな思いが駆け巡りながら、本心ではないこと
をわかっていました。でも、こんなふうにしか書けないの
です。

 

 

そんな心の葛藤に書いては丸めて捨ててとペンは止まった
ままで、もう後には引けない状況に、最後は腹を決め、
清水の舞台から飛び降りる気持ちで書き上げたのでした。

 

 

 

母の誕生日会当日、施設内のホールには、入居者をはじめ
スタッフも勢ぞろいして、私の気持ちとは裏腹に賑やかに会
は進んでいきました。

 

 

私は、なにか人生の沙汰を待つかのような、そんな心落ち
着かない心境でその会を傍観していました。

 

 

そしてその時がやってきました。

 

 

主任さんは、左手を三角巾で吊るした車いすの母をスタンド
マイクの前まで呼び寄せ、そして私からの母への最初で最後
の手紙を、母に向かって読み始めたのでした。

 

 

『お母さん、お誕生日おめでとう。
 お母さんの人生は、いいものでなかったかもしれない。
 でも、これだけは言えます。

 

 僕を産んでくれてありがとう。

 

 そして、僕を産むために生まれてきてくれてありがとう。

 

 いろいろあったかもしれないけれども、
    今、僕はあなたの 息子に生まれて来て、本当によかったです。

 

 僕は、どんなときもあなたの自慢の息子です。
 お誕生日おめでとう。』

 

これが私にできた精一杯の気持ちでした。

 

 

手紙を聞き終えた母は、うつむきながら弱々しく嗚咽を堪え
るように泣いていました。主任さんから掛けられた言葉に、
母は小さく何度もうなずいていました。

 

 

そして驚いたことに、ホールにいた他の入居者の方たちも
泣いていたのでした。

 

 

私はそのとき、
『俺はつくづく幸せな男なんだな』と思いました。

 

なぜなら、このような機会に恵まれたのですから。

 

 

巡り合わせなのか、今日3月27日は、母の月命日です。

 

御香の匂いが、今改めて自分が生かされていることを思う
のでした。

 

 

次回は、ありがとうのアファメーションが創り出した、
「すべてはゆるされた」につづきます。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
 

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