第二話「対話」

 

 

和尚の彼女の第一印象は、その女の子が幼い顔をして小柄だったせいか、高校生のように見えた。しかし、服装からの容姿を見ると、二十歳前後という印象だった。

 

 

和尚は、彼女に母屋の居間に案内した。いつものように妻が、お茶とお茶菓子を持って笑顔で彼女を迎えた。

 

 彼女は、大人の女性を見るのが初めてかのように、緊張した面持ちで顔を強張らせながら、妻に向かって少し頷いて挨拶をしたようだった。妻は手が離せない用事があってそのまま台所に引っ込んだ。

 

 和尚は彼女がお茶を飲んで少しすると、早速彼女に相談内容を聞いた。すると、彼女は妻がいるという存在を嫌がってか、誰もいない静かなところで話がしたいと言った。

 

 

彼女は、さっき境内を散策した時に見た、お堂で話がしたいと言った。和尚は彼女の要望を叶えるため、妻に一声かけてお堂へと行った。

 

 

この時期のお堂は、まだひんやりとして肌寒かった。和尚は、大きな仏壇の所に行って香をくゆらせ、最近ではよくあるのかガスファンヒーターのスイッチを入れて、座布団越しに彼女と対面したのだった。

 

 

 

和尚が彼女の名前を聞くと、彼女は『サラ』と名乗った。和尚はどうも源氏名っぽかったので、そのことを言うと、本名は『明日香』と言った。歳は21歳だった。

 

 和尚は彼女に「さて、今日はどんな相談ごとかな。」と聞くと、彼女は溜め込んでいたものを一気に吐き出すかのように話し出した。

 

 和尚は、彼女が話しているのをしばらく聞いていた。

 

彼女は、今、スナックで働いているらしく、そこのお店での出来事や不平不満を言ったかと思うと、今度はそこのお店は年齢層が高く恋人ができないという話や、彼女の思っている日常の気になってることとかについて延々と話をしたのだった。

 

 

 和尚は話の話題が出る都度、「今働いているお店での悩み?恋人ができない話?昔の恋人と何かあった話?男性に対する思い悩んでいる悩み?」と、次から次へと聞かないといけない情況になっていた。

 

 

 和尚は、彼女の次から次へと変わる話を止めて、深く掘り下げて聞こうと思うのだが、彼女はそんなことはお構いなしに、思ったことを話し続けたのだった。

 

 

 和尚は、彼女の今ある言動をより深く知るために、彼女の今までのバックグランド(生い立ち)を聞くために話を持っていくのだが、その話も昔の楽しい想い出話をするように話をはぐらかせるのだった。

 

 

 彼女が話す今までの話は、どれもこれも切羽詰まった話ではなく、ただのおしゃべりにしか聞こえなかった。そんな時、和尚はふとあることに気づいたのだった。

 

つづく

 

 

 

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