『§まっすぐに生きるのが一番』
「第81話:「人はだれもが幸せになる権利がある」

 

 

哲也が意図しないまま「殺し文句」を言った瞬間から、哲也と優花はお互いを認め合った唯一の存在として、恋人同士の関係になった二人の物語。

 

 

前回、哲也は優花のおばあちゃんから、『人は幸せになるために生まれて来て、その幸せを享受し、その幸せを今度は多くの人に分け与え、また共有すること』という言葉を聞き、

 

 

いろんな人のお蔭で自分がいることを思いながら、今度は自分が多くの人に与えられる人になりたいと思っていた。

 

 

今回は、前回のおばあちゃんの言葉にもあった、「人はだれもが幸せになるために生まれて来た」ことについてのお話です。

 

 

哲也は、おばあちゃんから『人は幸せになるために生まれて来て』と聞いて、人はだれもが本当にそう思って生きているのだろうか、と思った。

 

 

哲也は率直におばあちゃんに聞いてみたのだった。

 

 

 

「おばあちゃん、人は『だれもが幸せになるために生まれて来た』と思って生きてるのでしょうか」

 

 

「そうね、そう思っている人はそう多くないかもしれないわね」

 

 

「おばあちゃんが言ってくれた言葉は、とても大事なことだと思うんです。もし、誰もがこの思いを持って生きていたら、それが生きる目的みたいなふうに思っていたら、世の中はそういう生き方をみんながしていると思うんですが」

 

 

「そうね。そうかもしれないわね。ただ、『だれもが幸せになるために生まれて来た』とは思ってないかもしれないけれども、

 

 

『だれもが幸せになるために生きている』ことは確かだよね。

 

 

人はだれもがそう思いながら、社会の縛られごとや日々の中での縛られごとといった、決まりごとに縛られすぎて生きているのかもしれないわね。

 

 

中には、そんな周りの人や環境に順応しようとするあまり、自分自身を縛ってしまっている人もいるかもしれないわね。

 

 

そうやって人は、『幸せになるために生きている』ことを、忘却の彼方へて追いやってしまっているのかもね。

 

 

でもね、『人はだれもが幸せになる権利がある』ってことは、忘れてはいけない大切な生きる知恵だと思うのよね。

 

 

人が生きるっていうことは、成長し続けることと同義語だと思うから、いろんなことがあり、大変なこともある。

 

 

その状況がどれほど困難を極めても、人はそんなとき幸せになるとは思えないかもしれないけれども、

 

 

この今の瞬間を楽しみ、毎日の生活を楽しみ、愛し、笑う権利があることは、決して忘れてはならないと思うの。

 

 

この権利を人が放棄したとき、人は幸せになることを諦め、今の自分の渇望する欲求だけを満たそうとする。

 

 

そんな自分自身の外に欲求を求め続ける、そんな流された生き方を選んでしまうのかもしれないわね。

 

 

哲也さんがはじめに言ってくれた、『人は幸せになるために生まれて来て、そしてその幸せを享受し、その幸せを今度は多くの人に分け与え、また共有すること』を、

 

 

だれもがそういう生き方をする、これからの人生を生きる新しい価値観を持って生きることができれば、

 

 

人はだれしももっと幸せな生き方をできるかもしれないわね。

 

 

でもね、今の若者世代(1980年代以降に生まれて来た人)の価値観は、確実にそのような方向に向かっていると、私は日々の中でそんなふうに思っているの。

 

 

言葉は違えども、感動や楽しさ、喜び。それを多くの人と共時したい。そして、その思いを誰かのために共有した生き方がしたいと。

 

 

哲也さんはどう思うかしら?」

 

 

 

哲也はおばあちゃんの言葉を聞き、確かにおばあちゃんが(前回)言っていた、

 

 

感動や信頼や一体的楽しさや喜び、笑顔、感謝。そのようなところに幸せの価値を求める、そんな新しい価値観の時代になってきている気がした。

 

 

自分もそうだけど、自分より若い社員をみていると、そんなことを求め、そこにやりがいや生きがいみたいなものを、見出そうとする生き方をしようとしている気がする。

 

 

それが見出そうから、見出すことがあたり前になったら、そんなことを自分でデザインする生き方を望んだとしたら。

 

 

AIが単純労働を代替し、人がもっと自由に好きなことをして生きていけるような余暇が生まれるようになったら。

 

 

世の中の生活スタイルは劇的に変わり、人は自発的に自分にとっての幸せを求め、その幸せの価値観同士がつながり合う、そんな幸せでつながった心の時代が来るのではと、本気で思ったのだった。

 

 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

 

 

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