『§まっすぐに生きるのが一番』
「第56話:笑う門には福来る」

 

 

哲也が意図しないまま「殺し文句」を言った瞬間から、哲也と優花はお互いを認め合った唯一の存在として、恋人同士の関係になった二人の物語。

 

 

前回、『自分の幸せは自分で創り出すものだ』と言うことは、一言で言えば“素直”な心を育むことが、なによりも大事と言うことだった。

 

 

哲也は優花の話を聞きながら、優花が話していると言うより、同居してるスーパーおばあちゃんの言葉を聞いているような気持になり、うんうんと優花の言葉を聞いていた。

 

 

「哲也、いい顔してるね」

 

 

「え!」

 

 

「はじめて会った頃は、そんな優しそうに微笑んでる姿なんてなかったのに」

 

 

「はじめの頃って緊張してたんじゃないかな」

 

 

「なんか理屈っぽかったような、何でも言葉で説明しようとしてた感じがしたけど」

 

 

「そうだったかな、そう言う優花もあまり笑わなくて理論派の女性って感じがしたけど」

 

 

「そうだったかもね。なんかそうすることで自分を守ると言うか、自分の存在意義を確かめよと生きていたのかもね」

 

 

「へー、そんなことが言えるのが凄いね」

 

 

哲也はそう言って笑った。

 

 

「哲也と出会った頃は、妹が問題を起こしたりして、今思うと一つ屋根の下で家族が一緒に暮らしてはいたものの家族はバラバラだった。

 

 

そこにおばあちゃんがやってきて、そこから妹もお父さんもお母さんも、そして私も家族を取り戻した感じがして、今では家に笑いがあるもんね」

 

 

「優花を見た時、お嬢様で温かい家庭に包まれて、家族みんな仲が良くて理想の家族と思ってた。話を聞いたときは正直驚いたよ」

 

 

「みんな家族と言う体裁だけを整えて、家族でありながらどこか互いに干渉し合わないようにしてたかもしれない。

 

 

そうしてうわべだけの仮面家族のようになりかけていたところに、妹が問題を引き起こす形で、家族が家族としてかろうじてつながっていたのかなって思う」

 

 

そんなときに、優花の父方のおばあちゃんがやって来た。

 

 

そして、あまり自分からは積極的に話さなかった優花が、おばあちゃんと家族が巻き起こす話を、いつも真剣にときに楽しそうに話していたことを哲也は思い出していた。

 

 

「この間ね、おばあちゃんと二人きりになって話してたんだ。おばあちゃんが来てから家族に笑いが増えたって。そうしたらいつものように“そうだったかしら”って言うんだけど。でも立ち上がって去り際に、

 

 

『笑う門には福来る』って。

 

 

本当にそうだと思った。

 

 

家族それぞれいろんなことがあって、嫌なことや面倒なこともあるのかもしれないけれど、家族に笑いが増えたことで、嫌なことも嫌でなくなり、面倒なことも面倒でなくなったりしてるのかもしれないって思ったの。だから楽しくなるのかなって」

 

 

哲也はそれを聞きながら、笑いが笑いを引き寄せ、それは楽しいことが楽しいことを引き寄せ、幸せがまた幸せを引き寄せるという“類は友を呼ぶ”ではないが、いい波長はいい波長を引き寄せ、逆に悪い波長は悪い波長を引き寄せるのだと思った。

 

 

『笑う門には福来る』

 

 

笑いが絶えない家には福がやって来るという意味は、
私たちも日頃から微笑む状態を創り出すことが大切。

 

 

なぜなら、その結果としていい波長がいい波長を引き寄せ、
前向きな自分を創り、主体的に行動できるのかもしれない。

 

 

そうして『経験すべき苦労』も、
気がつけば苦労ではなく自己成長と思え、

 

『余計な苦労』も減り、自然と笑顔も増えるのかもしれない。

 

 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

 

 

 

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