『§まっすぐに生きるのが一番』
「第68話:心を育むキャリア」

 

 

哲也が意図しないまま「殺し文句」を言った瞬間から、哲也と優花はお互いを認め合った唯一の存在として、恋人同士の関係になった二人の物語。

 

 

前回哲也は、自分にだけ都合のいいように生きていた自分がいたことを思い出していた。

 

 

そして、改めて「奉仕する心を育むこと」を自分の心に刻んだのだった。

 

 

優花のおばあちゃんは、湧水のごとく次から次へと話題を哲也に話し聞かせた。

 

 

今回もまた、おばあちゃんは静かに話し出した。

 

 

「哲也さんは、奉仕する心の大切さを知ってくれたようだね。最近はそんな心を忘れがちになっているからね。

 

 

この間、知り合いの大学教授と話をしていてね、大学に来る学生の資質が昔と比べると落ちたような話をしていてね。

 

 

それで大学1年生や2年生の時に、キャリア教育をしているそうなのね。

 

 

◇キャリアとは・・・

 

 

仕事に取り組むプロセスの中で身につけていく「技術・知識・ 経験・出会い」に加え,人間性を磨き,プライベートを含めた自分自身の生き方を磨くこと。(働くことにまつわる「継続的なプロセス」と「生き方」そのものを指す)

 

 

厚生労働省『キャリア形成を支援する労働市場政策研究会』報告書より一部抜粋

 

 

◆キャリア教育とは・・・

 

 

社会的・職業的自立に向け必要な基盤となる能力や態度を育成すること。(生涯にわたり自分らしく生きるための教育)

 

 

文部科学省中央教育審議会答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」より一部抜粋

 

 

 

今の世の中は、価値観が多様化してきて、さらに将来が見据えるのが難しくなってきた時代だから、働くことそのものの考え方も変わってきたみたいね。

 

 

私らの若い頃は、生計を立てるために働くことが主眼にあったようだけど、今はそうではないみたいね。

 

 

なにやら『生き方』そのものを考えて、働くことを考えていかないと、これからの時代を上手く生き抜けないようになったみたいね。

 

 

その教授が言うにはね、生計を立てて働くこと、就職活動に直結するような話はしやすいけれど、『生き方』も教えるとなるとなかなか難しいらしい。

 

 

それはそうよね。『生き方』と言ったら、幅広いものね。人間力や哲学のような考え方も必要になってくるだろうし、そのことを考えて学問体系を確立するとなると、大学の教授でもなかなか難しいものらしいと、言っていたわ。

 

 

でもね、『生き方』って、実体験してきた中で学んでいく真理みたいなものだと思うのよ。

 

 

簡単に言えば、苦労を乗越えてきた人の言葉だと思うのよ。

 

 

そして、その苦労してきたことを、世の中の人や社会に還元して来た人の言葉って、心を打つものばかりだと思うの。

 

 

その言葉は、だれにでも響く真理そのものだから、その人たちを尊敬し慕うのもわかる気がするのよね。

 

 

それだけに、知識だけの理屈ではなくて、心に響く本物が求められているのかもしれないわね。

 

 

だから学校の授業も、講義型であったものを、アクティブラーニングと言って、能動的に発信してくような授業が多く取り入れられているみたいね。

 

 

言ってみれば、体験して学ぶことを重視した教育よね。

 

 

昔と今とでは時代も違うから一概には言えないけれども、やはり人との関わりが減ってきたと言うことは、人とが交わり合って身を持って体験することが減っているのよね。

 

 

ゲームやスマフォの影響がどれぐらいあるのかはわからないけれども、疑似体験や通信の中でのコミュニケーションでは、人と人の関係を推し量るには限界があると思うのよね。

 

 

その教授が最後に言ってたわ。社会に求められる人材とはポテンシャルの高い人と。

 

 

でね、私、ポテンシャルなんて言葉知らないから後で調べてみたの。

 

 

例えば、自己分析能力や向上心が高い人だったり。

 

常に考え行動し続けられる人、失敗から反省し学べる人。

 

課題と目標のバランスがよい人=直近の課題に縛られず、先の目標をしっかり見据えられる人なんだって。

 

 

正直、私、今に始まったことじゃないじゃない、と思ったわ。

 

 

それだけ世の中が豊かになって、大切なものを失っているのかもね。

 

 

いやそうじゃないかもね。

 

 

ようやくどういうふうに人は生きて行けばいいのか、体系化され可視化されてわかるようになってきたのかもしれないね。

 

 

それだけにキャリア教育を学問として教えること以上に、心に響く体験を通した学びを教えることが大切になってくるわね。

 

 

その上に知識と言う専門性が身に付いていくと、人は本当の意味でのポテンシャルの高い人になるのだろうね。

 

 

そうじゃないと、結局、形だけのキャリア教育になって『生き方』が置き去りになった学問になっていくんだろうね。

 

 

これから“ItoT”や“AI”の技術革新で、ますます世の中が便利になり、生産もさらに効率化されて、少ない労力で利益を上げられるようになって来るわね。

 

 

そうなると、働き方も8時間労働から6時間労働が当たり前になって、余暇の時間を今まで以上に持てるようになるから、人は文部科学省の中央審議会の答申で言っているキャリア教育、

 

 

『生涯にわたり自分らしく生きる(教育)』ことが求められるようになるんだろうね。

 

 

哲也さん、哲也さんは優花と結婚することを考えているんでしょう。

 

 

そうしたら子供も生まれてくるわけだから、あなたたちの将来、そしてその子供の将来も見据えて哲也さん自身も厚生労働省が言う

 

 

『働くことにまつわる「継続的なプロセス」と「生き方」そのもの』である『心を育むキャリア』を勉強していかないといけないわね」

 

 

哲也はおばあちゃんから優花との結婚と言う言葉を聞いて動揺しながらも、もっと将来のことを考えて勉強していかなければと、心に強く思ったのだった。

 

 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

 

 

 

 

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