『§まっすぐに生きるのが一番』
「第70話:愛と希望と勇気の日」

 

 

哲也が意図しないまま「殺し文句」を言った瞬間から、哲也と優花はお互いを認め合った唯一の存在として、恋人同士の関係になった二人の物語。

 

 

前回、優花のおばあちゃんは、「一年の計は元旦にあり」と言う話から、急速に進歩するテクノロジーの時代に、

 

 

ものごとを見抜く力、人と良好な関係を築くにも、理解しようとする考え、心の習慣を持つことの大切さ。

 

 

理解しようとすることは、前向きな能動的な態度だし、自らの主体性をもって行動することだし、自分に責任をもった自らを律して自立することにつながり、自分らしく生きていけるのではないかと、話をした。

 

 

今回は、久しぶりに哲也と優花は二人だけの時間。哲也は待ち合わせの場所で優花の車を待っていたのだった。

 

 

 

「待った?寒い中お待たせ」
「大丈夫、時間通りに来てくれたから」
車中の二人の会話は、前回のおばあちゃんの話になっていた。

 

 

「おばあちゃんいつもすごいよね。ほんと物知り。4年前にAKB48を卒業した篠田麻里子の話を引き合いに出してくるとは思わなかったわ」
「俺もあれには、おばあちゃん若い!って思ったよ」
「おばあちゃん日頃自分の部屋で何をしてるかなって思ってたけど、けっこうバラエティ番組もみてて意外だった。」

 

 

「そうそう、哲也の『一年の計は元旦にあり』はなんなの」
「えっ、そう言えば考えてなかったんだよな。そう言う優花はなに」
「私、私は『愛と希望と勇気を持つ一年』かな」
「なにそれ、すごいんですけど」
「『愛と希望と勇気』なんかすごくない?これからの私の一年バラ色って感じで」
「でも、華やかに見えるバラ色の人生にはやはり棘がありそう…」

 

 

「哲也うまいこと言うわね。そうかもね。人生毎日がバラ色じゃないし、棘があるからバラ色の人生も感じらえるんだよね。やっぱりバランスって大事よね」
「そ、そうだよね」
「なに、奥歯にものが挟まった言い方…」
「いや、余計なことを言ったかなって思ってさ。それなのに褒めてくれたから…」

 

 

「そうだっけ」
「まあ、いい話に水を差したと思ったからムッとするかなって思ったと言うより、一年の計を立てた言葉なのに、どこか他人事のような客観的な一般論を述べてるような気がしたんだけど、本当にそう思ってる?」
「えっ、も、もちろん、そう思ってるわよ。なんてね。

 

 

 実はね、車に乗ってエンジン掛けたら、カーナビから『1月14日。今日は愛と希望と勇気の日です』って流れてきてね。

 

 

へ~今日はすごいじゃん。哲也とデートするのにぴったりな日と思ってね。それでなんで今日がそう言われているんだろうって気になってスマホで調べてみたの。

 

 

そうしたら、1959年1月14日に、南極大陸で1年間置き去りにされた日本の南極観測隊の樺太犬のタロとジロの生存が確認された日なんだって。それで人々に愛と希望と勇気を与えたので記念日に制定されたんだって。

 

 

哲也『南極物語』って映画見たことある?

 

 

高倉健と渡瀬恒彦が出ていて、二人は犬係の越冬隊員だったのよね。小さい頃家族とテレビを観ていて二度号泣したわよ。哲也は観た?」

 

 

「うん、観たよ。『南極物語』は俺の中では鬼門。あれを観たとき、泣きそうになった以上に胸が締め付けられて、それ以来、動物もそうだけど人が死んでいく映画やドラマはNG」

 

 

「そうだったんだ。でも、長澤まさみの『世界の中心で、愛をさけぶ』は観たって言ってなかった?」
「うん観た」
「なんで観れたの?」
「平井堅の瞳をとじての歌に興味を持って、それでどんな映画かなって観たら、どんどん引き込まれて…」
「それで泣いた」
「うん…」

 

 

それを聞いた優花は“哲也かわいい”と思い、キュンキュンわくわくその余韻に浸りながらハンドルを持つ手を握り直したのだった。

 

 

『愛と希望と勇気』

 

 

この言葉は時代が変わっても、人が人として求め生き続けている大切な言葉。

 

 

これからももっとこの言葉の大切さを理解し、人と人とがつながり合える世の中を創っていきたいものである。

 

 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

 

 

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