『§まっすぐに生きるのが一番』
「第72話:挨拶ができなくなっている学生」

 

 

哲也が意図しないまま「殺し文句」を言った瞬間から、哲也と優花はお互いを認め合った唯一の存在として、恋人同士の関係になった二人の物語。

 

 

前回哲也は優花とのドライブ中に、大事なところで自分の人生を決めてこなかった新入社員の話をしていた。

 

 

その結果、言われたことはやっていたけど、それ以上の自分からというものはなく指示待ちの受身的な姿勢が、注意されることを増やし、そうなると仕事も楽しくなくなって、

 

 

結果的に自分にあっていないと辞めた、取引先の課長の話をしたのだった。

 

 

今回は、哲也が人事担当者から聞いた、「最近の学生は挨拶やマナーができていない」話を優花に語りかけた。

 

 

 

「大事なところで自分の人生を決めてこなかった新入社員もそうなんだけどさ、最近の学生は挨拶やマナーができていないんだって」

 

 

「へーそうなの。うちに来る新卒の学生はしっかり挨拶とかできてるけどな」

 

 

「うちに来る新卒の学生もできてるから、ほんとに?と思ったんだけど、仲のいい人事担当者が言ってたんだけどね。

 

 

この間、新卒就職情報サイトを運営している会議に行ったんだって。この春の3月に卒業する学生の就職活動の総括から、来年2019年3月に卒業する学生の動向の話があったそうなんだけど。

 

 

ポイントは大きく3つ言ってたかな。

 

 

一つは、この今の新卒の就職活動の売手市場は、再来年の2020年卒まで続きそうだと」

 

 

「そうね、オリンピック需要もあってインバウンドの仕事も好調だし、テクノロジーの分野も世界中から外国人が来るから、お披露目には絶好のチャンスだもんね」

 

 

「経済が上向きにあるのは、オリンピック需要が支えている部分ってあるかもね。二つ目が、新卒採用の二極化がこれからも続くって」

 

 

「どういうこと?新卒採用って二極化してるの」

 

 

「そうらしい。働くことに意欲が高い学生と、強い意志を持たせないといけない学生が二極化してるんだって。さっきの課長の話ではないけど、受身的な姿勢の学生が増えてるらしい」

 

 

「へー今の新卒の採用事情って、そんなふうになってるんだ」

 

 

「そう、その取引先の課長も言ってたんだけど。大企業や優良中堅企業は、二極化している学生の就職意識が高い学生が入社してるから、そう思わないらしいけど。

 

 

中小企業も人手がほしくて新卒採用するけど、どちらかというと就職に強い意志を持たせないといけない学生が集まって来るらしい。

 

 

その要因は、どうしても大手企業や優良中堅企業で不採用になった学生が面接に来る傾向が高くなるらしいんだけどね」

 

 

「それって今に始まったことじゃないんじゃないの」

 

 

「2-6-2の法則ってあるじゃん。働きアリの法則から来てるらしいけど、2割が優秀でってやつ。でも、その6の層が明確でないってゆうか、中間層が少なくなってるらしい。

 

 

でさ、三つ目が、挨拶やマナーができてない学生が増えてるんだって。

 

 

うちの会社でも面接に来る学生も以前と違って、挨拶やマナーができていない傾向が増えてるんだって。

 

 

面接会場に入って来る際も、『失礼します』って入ってこなかったり、無表情のまま椅子に座るんだって。

 

 

どんなに優秀な学生でも、礼がなっていない学生や表情が乏しい学生は、組織で働くには合ってないからそこで不採用にするらしいけど」

 

 

「今の学生ってそんなふうになってるの」

 

 

「人事担当者が言ってたんだけど、面接でそんな学生の自己PRを聞いてると、人と関わって来なかったとわかるケースがほとんどなんだって」

 

 

「仕事をしてると、そんな学生と会うことはめったにないし、そんな情報も入ってこないから、なんか社会の裏側っていうのか、大変なことになってるんだね」

 

 

 

人との関わりが希薄になってきたと言われて久しいですが、挨拶やマナーができておらず、表情も乏しい学生が増えているという現状。

 

 

豊かになり生活するにも不自由がなくなってきた時代に、目的意識が持ちにくい若者が増えているという声も多い。

 

 

ものごとが便利で簡単に、しかも自分に都合よく選択して生きられる社会の中で、自立するための自分を律する力である、理性や価値観といった社会で生きていく力が培われず、考えたり想像(創造)する力がどんどん失われているのかもしれない。

 

 

その中でも、80年の時を経てベストセラーになっている
『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著・マガジンハウス)がクローズアップ現代+で若者の間でも取り上げられている話題は、将来への明るい兆しかもしれない。

 

 

簡単に自分の外に豊かさや幸せを求めるのではなく、内的な自分自身について考えるそんな時間を持てるような、そんな考える習慣を失わない社会にしていかないと、

 

 

テクノロジーに翻弄されて迷惑はかけてないからと身勝手に生きていく若者が増える気がする。

 

 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

 

 

 

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